わからない英単語が出てきたときの推測法
どんなに単語を覚えていても、分からない単語は必ず出てきます。その単語をどのようにして文脈から推測できるかが受験英語において鍵となります。
しかし、具体的な推測法まで説明してくれる人はそう多くありません。
そのため、この記事では分からない単語が出て来たときの推測法についてのお話をします。単語力+推測力であなたの英文読解力を飛躍的にUPさせましょう。
目次
1. パラグラフリーディング
英文の論理構成は非常に分かり易く、1つのパラグラフに1つのトピックセンテンス(主張)があります。大抵の場合、パラグラフの最初にありますので、
ここを掴んでしまえば、他の文はその肉付けに過ぎません。その他の文はほとんどの場合「主張」の「言い換え」か「具体例」です。トピックセンテンスで分からない単語が出て来ましたら、「言い換え」や「具体例」と対応させて、その単語がどこを言い換えているのかを探りましょう。
トピックセンテンスを掴んでしまえば、「言い換え」や「具体例」は流し読みで次に進みます。
1つ例を挙げましょう
“All animals are equal, but some animal are more equal than others” This famous slogan from George Orwell’s novel Animal Farm captures the current state of affairs in nature conservation quite well. Though conservationists are uncomfortable that we might have to let some animal species go extinct, they also know that it is impractical to try to distribute their efforts evenly.
2017年度 早稲田大学政治経済学部
【訳】
「すべての動物は平等である。しかし、ある動物は他の動物よりさらに平等である。」
George Orwell著の「動物農場」で有名な言葉であるが、これは現在直面している自然保護の現状を的確に表している言葉である。特定の種の絶滅が決定的になったとき、自然保護主義者はその度心を痛めているが、彼らもまたすべての種に対して平等に力を注ぐことは実践的ではないと悟っているのである。
この文でconservationの訳が分からないとしましょう。
ここで1文目を2文目に見比べます。
1文目
「すべての動物は平等である。しかしある動物は他の動物よりさらに平等である。」
George Orwell著の「動物農場」で有名な言葉であるが、これはconservationの現状を的確に表している。2文目
特定の種の絶滅が決定的になったとき、conservation主義者はその度心を痛めているが、彼らもまたすべての種に対して平等に力を注ぐことは実践的ではないと悟っているのである。
つまり2文とも「すべての生き物を平等に扱うことは難しい」と述べています。ここで1文目の「conservationの現状」を言い換えている箇所は2文目の「すべての種に対して平等に力を注ぐことは実践的ではない」の箇所だと分かります。
すべての種に対して力を注ぐことは実践的ではないので、conservation主義者は動物の絶滅に対して心を痛めている。つまりconservationは「保護」という意味だと推測できます。
conservationの訳語がここから思い浮かばなくても、「conservationの現状」を「すべての種に対して力を注ぐことは実践的ではない現状」と置き換えて読めば問題ありません。
マークシート形式である早稲田大学の問題は日本語訳を書かせることはありませんので、意味をつかんだらどんどん読み進めていきましょう。
2. 語幹を意識する
単語推測法で最もよく使われている方法です。
おそらく勘の良い人は既に実践していると思います。英単語のスペルはただ無意味に決められているわけではなく、漢字の部首と同じように、いくつかの意味の組み合わせで出来ております。
例を挙げます。
prescription という単語があります。
非常に長いスペルですが、このスペルが持つ語幹を理解すれば、初見でも意味を推測することができますし、スペルも簡単に覚えることができます。
prescriptionを語幹で分けると以下のようになります。
pre(事前に) – script(スクリプト) – tion(名詞を示す語尾)
prescriptionは医薬関係の文で使われます。医薬関係の文で「事前のスクリプト」となれば、prescriptionは「処方箋」であるこということが予測できるでしょう。
語幹に関する参考書は書店でも多く販売されております。ここでおすすめの参考書を紹介します。
収録単語3600語。語幹を覚えることで実質3600語以上の単語力が身に付きます。
語幹について初めて学ぶ人を対象に書かれていますので、分かり易く、覚えやすい非常に便利な単語帳です。英語が得意な人にも苦手な人にもおすすめです。
3.接続詞 but に注意!
接続詞Butには要注意です。
but の前と後ろでは逆のことが書かれております。これは単語の意味を推測するのにかなりの武器になります。
さらに、butの後は重要なことが書かれており、そのパラグラフのトピックセンテンスになることが多いので、確実に読んでいきましょう。
ここで一つ例を挙げます。
In recent years, proponents of clean energy have taken heart from the falling prices of solar and wind power, hoping they will drive an energy revolution. But a new study coauthored by Massachusetts Institute of Technology energy economist Cristopher Knittel and colleagues at the University of Chicago suggests that technology-driven cost reductions in fossil fuels lead us to continue using all the oil, gas, and coal we can― ―unless governments pass new taxes on carbon emissions.
2017年度 横浜国立大学経済学部
ここでのトピックセンテンスは2文目の‘But, a new study coauthored by Massachusetts Institute of technology energy~’です。トピックセンテンスが1文目ではないとき、大抵の場合はBut以降の文がトピックセンテンスになります。
また、最初のパラグラフでは一般論や導入文が1文目に来ることが多いので、トピックセンテンスが1文目に来ることは例外的にそれほど多くありません。
2文目でまず気になる単語はcouthoredですが、この単語の推測法は後に述べるとして、ここではbutによる単語の推測法を説明します。
2文目にあるfossil fuels の意味を推測してみましょう。
1文目
In recent years, proponents of clean energy have taken heart from the falling prices of solar and wind power, hoping they will drive an energy revolution
【訳】
近年、クリーンエネルギーの支持者は、風力発電と太陽光発電のコスト削減によるエネルギー革命の到来に期待を高めている。
このように書かれています。proponents (支持者)は実際の問題用紙には脚注で説明がされていますので、推測する必要はありません。
そして、この文の後にbutが続きます。当然この文と逆のことが言われていますので、2文目はこの1文目と対応させて、分からない単語を推測すれば良いのです。
新エネルギーのコスト削減への期待をbutで結ぶ場合は、その期待とは程遠い現実の話が来ると予想できるでしょう。
そして
technology-driven cost reductions in fossil fuels lead us to continue using all the oil, gas, and coal we can
【訳】
技術開発によってfossil fuelsのコストが削減され、我々は依然として石油、天然ガス、石炭を使い続けている。
2文目にはこのような現実が語られています。
新エネルギーのコスト削減に対して ’technology-driven cost reductions in fossil fuels’ (技術開発によるfossil fuelsのコスト削減)のように、’fossil fuels’ のコスト削減について語られていることから、’fossil fuels’ は新エネルギーとは逆の旧エネルギー、つまり化石燃料だと推測ができます。
後に続く、「我々は依然として石油、天然ガス、石炭を使い続けている」から、fossil fuelsが化石燃料であることが確定します。
4. 動詞は動作主と対象に注目する。
動詞の意味の推測は是非とも習得して欲しい単語の推測法です。慣れてしまえば、大抵の動詞を推測することができます。推測の方法は単純です。分からない動詞が出てきたら、その動作主と対象に注目しましょう。動作主と対象が分かりますと、推測できる意味の選択肢がかなり狭まります。
例えば以下の例を挙げます。
私はその時テレビを見ていました。
I was watching TV at that time.
watchの意味は言うまでもなく「見る」です。この単語の意味を分からない人はまずいないと思いますが、仮に分からなかったとしましょう。
watchの動作主はIで対象はTVです。
「私」と「テレビ」ですることと言ったら「見る」くらいです。ここで「食べた」や「作った」などの意味は出てこないでしょう。特別な文脈がない場合はまず「見る」で間違いありません。
言われてみれば単純なことです。日本語でしたら私たちはこのことを無意識のうちに日常生活でたくさん行っています。
しかし、英語になるとそれができません。
私たちの頭は一度にできる仕事に限度があります。不慣れな言語で何かを考えようとすると、思考力がかなり劣ります。日本語で考えると非常に簡単なことでも、英語では特別訓練が必要となります。
それでは、先ほど(3項)保留にしておいたcoauthored の意味について考えてみましょう。
But a new study coauthored by Massachusetts Institute of Technology energy economist Cristopher Knittel and colleagues at the University of Chicago
これは
マサチューセッツ工科大学エネルギー経済学者Cristopher Knittel氏とシカゴ大学の研究グループによってcoauthorされた新しい研究。
と訳すことができます。
また、接頭辞co- は共同で行うことを意味します。
研究者たちが研究に対して共同で行うものは「発表」ですね。後にこの「新しい研究」を主語にして、動詞がsuggestと続くので、「発表」という意味が確定します。
実際のところcoauthorは「共著」という意味ですが、意味は大きくずれません。動作主と対象物がはっきりしている以上、動詞を丁寧に推測すれば意味が大きくずれることはないのです。
5.教養を深める
同じ英語力を持っていても、教養の有無で所要時間にかなり差がでてきます。自分が良く知っている話が出題されると、所要時間が半分以下に削減できると考えてよいでしょう。
なぜなら、問題文を読まなくても何が書いてあるのか予測がつくからです。問題文を読むのは自分の予想と一致しているか確認するだけでよいのです。
さらに、分からない単語が出てきても、初めからどのようなことが書かれているかが分かるので、自分の知識で容易く推測することができます。
6.英語は日本語で考える
単語の推測には高度な論理的思考力が求められます。しかし、以下の言葉が論理的思考の大きな妨げとなっています。
「英語は英語で考えろ」
多くの英語教師、講師、英語教育論者がこの言葉を唱えます。確かに間違いではありません。意味の理解に日本語を介していると時間的なラグもある上に、意味も若干ずれてしまいます。
しかし、受験勉強ではこの考えは捨てましょう。「英語を英語で考える」とは英語がペラペラになる為の最終目標です。受験英語には必要ないどころか非常に相性が悪いです。これには4つ理由があります。
6.1 そもそも英語で考えることは不可能
私たちの思考は言語による制約を受けます。つまり私たちは自分が今知っている語彙の範囲でしか物事を考えることができません。
英字新聞も読めない、英作文を書くにも一苦労するような語彙力では大学入試の問題を英語で解くことは到底できません。もし、自分ができていると考えているのであれば、それは勘違いで、頭の奥底で絶対に日本語を使っています。
本当にできるのであれば、その人は海外の大学入試も合格することができるでしょう。
6.2 人にはワーキングメモリがある
私たちは一度にこなせる仕事量に限度があります。これをワーキングメモリといます。
不慣れな仕事を行うと、このメモリー容量を圧迫し、充分な思考ができなくなります。
上位国公立の理系受験者は、計算問題でつまらないミスを無くすために、たとえ分かっている問題でも何度も解き直して、問題を解く為のメモリーをできるだけ少なくしています。
これを英語に置き換えてみましょう。
「英語を使う」ということだけでもかなりメモリー容量を圧迫します。これでは充分な思考をすることができず、回答力に大幅なハンデを背負うことになります。
6.3 英語を英語で理解できる人は日本語でも理解できる
「英語を英語で考える」ことはあくまでも英語学習の「最終目標」です。
最初は日本語で考えながら勉強を続けていたら、日本語の介入時間が徐々に縮まっていき、いつの間にか「英語を英語で考える」ことができるようになっていた場合がほとんどです。
学校や予備校の先生が言う「英語を英語で考える」というのもこのことを言います。初めから英語を英語で考えようとして、日本語を使わないというのは、考えることを放棄することと同義です。
これでは、そもそも英語の勉強すらできません。「英語を英語で考える」ことができる人は地道な努力を積み重ねて来た人です。英語が苦手な人が「英語で考える」ことを始めても絶対に英語は上達しません。
6.4 日本語で考えても前から意味を取ることはできる。
「英語を英語で考える」の意味を「前から意味を取ることができる」と捉えているのであれば、そのように考えていて結構です。「前から意味をとる」ことは受験英語には不可欠なスキルです。しかし、これも実は日本語で考えた方が圧倒的に簡単なのです。
前から意味を取るのに非常に便利な読み方は「スラッシュリーディング」です。
日本で言う「文節」ごとにスラッシュを入れていき、前から読んでいく読み方です。慣れてくるとスラッシュを打たなくても読めるようになります。
この読み方で重要なのが、「区切り毎にしっかりと意味をとっていく」ことです。スラッシュリーディングを練習する際に、受験生の頭にあるのが「速読」ですので、なかなか気付かれませんが、一つひとつ丁寧に訳していく方が圧倒的に速いです。
実は英文が一見膨大に見えても、一通り読むだけでしたら、さほど時間がかかりません。
しかし、問題に躓いて何度も読み直すことで時間をかなりロスするのです。日本語を使って正確にきっちりと読み進めていくことが却って時間短縮につながるのです。スラッシュリーディングに関する参考書は書店でも沢山売られております。ぜひとも手を取ってみてください。
ここでおすすめの参考書を紹介します。
訳文、区切り毎の訳、耳慣らし用CDと前から英文を読み進めていくためのメソッドが揃っております。レベル別参考書ですので、自分に合ったレベルを選ぶことができます。
まとめ
単語推測法は受験英語には必須のスキルですが、それに頼ってばかりではいけません。単語の推測力は豊富な単語力があってこそ身に付くものです。
分からない単語の意味を正確に推測するためには、最低でも別の単語9割を知っていなければならないと言われております。単語推測の訓練は単語の暗記と並行して行うことで、その力を相乗的に高めることができるでしょう