絶対に知っておいてほしい東工大合格のための物理の勉強法

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東工大入試の物理は、その問題を一度でも見たことがある人であれば問われている内容の重厚さ、高度さをよくご存じだと思います。
得手不得手がはっきりしやすい科目でもあり、模試などで苦い経験がある人も少なくはないのではないでしょうか。

その一方で、出題は非常に正統的であるため、正しい方向に努力できれば、得点につながっていく確率も高いのも東工大物理の特徴といえるでしょう。

今回は、在校生としての立場も生かしつつ、東工大物理対策の攻略法を伝授していきます。

1 勉強を始める前に

1−1 東工大物理の特徴と対策

まずは出題形式から見ていきましょう。

例年120分3題の出題となっていて、これは旧帝大等の難関大でも他に類を見ない、相当な長丁場となっています。

そのため、1つの大問の中で取り上げたテーマをじっくり、深く問う出題となっています。長く、重い出題が続くため、共通テスト、あるいは難関大とはいえども早慶などの私大などとは全く異なった趣旨の対策を積む必要が出てきます。

短時間でテンポよく答えていく試験とは対策法も全く変わってくる、ということになります。

さて、こうした特徴を踏まえて何を重視した勉強をすべきか考えてみましょう。

公式をたくさん暗記することでしょうか?
教科書を何周も読むことでしょうか?

こうした手法では、なかなか東工大の物理を攻略するのは難しいでしょう。

ではどうするのかというと、次のようなイメージです。

例えば、たくさんの公式群が手元にある状態を思い浮かべてみてください。
そしてその手元の沢山の公式がどのように繋がっているか、そういった関係性を理解していく、といった作業が不可欠になってきます

ですが、こうしたポイントを押さえずに「木を見て森を見ず」、つまり「公式ばかり覚えて全体が見えてない」状態になっている人が案外多いのではないでしょうか。

物理は、理科の科目の中でも特に公式が少ない科目です。暗記量が少ないだけに、最後に明暗を分けるのは、いかに物理という科目の根底を理解しているかにかかってくるといえるでしょう。

1−2 微積分を使用して、東工大物理の思考回路を掴む

さて、前項では東工大物理の特徴をお伝えしました。

では、実際に対策を積むうえで具体的にどういう手段を使うべきかというと、“微積分”の使用をお薦めします。ただし即効性はあまりありません。

明日から問題が解きやすくなるというより、数か月のスパンで物理の根本思想、概念が掴みやすくなっていくイメージです。

また、物理は数学等の科目と同様に、勉強内容を“積み上げていく”という特徴をもっています。従って、基礎の理解が盤石でなければ、応用として積み上げられる量にも限界が生じてしまいます

こうした観点からも、微積分を活用してうえで、物理がどのように体系立てられた学問たるかを理解していくような勉強法がよいと思います。

1−3 公式物理か、微積物理か

巷では大学受験程度の物理に微積分は不要だという意見も聞かれます。

実際、「微積物理」か「公式物理」かの2択で事が議論されている構図も多く見受けられます。

しかし、そもそもこの両者は対立する概念ではないと思われます。

どういうことかというと、微積分を使用する派は、微積という導出のバックグラウンドを知った上で“公式”を使用すればいいという話です。

なので、必ずしも解答の論述でも微積分を用いた表記をしなくてもよいということも覚えておいてください。

今回は、以上のような発想に基づき、参考書を用いて攻略していく術をお教えしましょう。もちろん、どの本も筆者が過去に使用したことがあり、太鼓判を押せるような代物を厳選しています。

2 勉強法・参考書

2−1 攻略ルート概要

さて、ここから具体的な攻略ルート概要を解説していくところですが、その前に一つ申し添えておくべきことがあります。

高校範囲の受験物理に話を限定すると、“微積分”の恩恵が受けられるのは「力学」「電磁気」の分野にほぼ集約される、ということです。

残りの「波動」「熱力学」「原子物理」に関しては、踏み込んでもあまり得るものが多くありません。ここのところを予め覚えておいて下さい。

また、微積分というものは、高校ではあくまで数学において中心的に語られる話題です。技術的には、高校3年次に習うであろう数学Ⅲ程度の知識を必要としますので、高校1年、2年生はそれまで少し待つ必要が出てきてしまうのが現状です。(もちろん、こちらも独学でやってしまう手もありますが…。)

今回は、以上のような経緯を踏まえて、“微積推奨ルート”と“公式重視ルート”の2つの攻略ルートを用意してみました。

まず、それぞれのルートの特徴から、どちらのルートを選ぶのがよさそうか、考えてみてください。分野によって変える、将来的には微積をやるつもりだけど、とりあえず公式重視で、などでも良いと思います。以下に判断基準の例も載せてみますので、参考にしてみてください。

微積推奨ルート
・力学、電磁気で大きく力を伸ばしたいという方(東工大物理的にもオススメ)
・微積分を中心とした数学を用いた物理の体系立て方を知りたい方
・解答時の考えの流れを、画一的に処理できるようにしたい方
公式重視ルート
・熱力学、波動、原子物理が苦手だという方
・高校1、2年生などの方で数学Ⅲが未履修の方
・あまり込み入った数学には正直立ち入りたくないという方(その方針でも戦えます)

具体的な流れをまとめると、下の図のようになります。

%e3%81%82%e3%81%82%e3%81%82序盤が導入に用いる参考書、黄色の枠内以降は演習に用いる問題集となっています。

太い矢印がメインストリートで、そこから幾つか細い矢印も派生しています。概ねこの流れに従っていくとスムーズだと思います。

ただし、青矢印はその特性上、微積分を使用しますので“青から赤”には行けても、“赤から青”には行けない場合が殆どですのでご注意ください。

自分がどういう方針で進むかは決まったでしょうか。矢印を追って、順に該当する箇所を以下でご参照ください。

2−2 微積推奨ルート

微積で解いて得する物理(オーム社)

微積を受験物理に導入する際に是非とも読んでおきたい1冊です。筆者が受験生のときに微積を導入しようと決心させた1冊でもあります。

語りかけるような語り口が特徴で、初めて触れる人にもハードルが高すぎないような配慮がなされています。授業で力学と電磁気を習った人で、簡単な公式の運用の練習が済んでさえいれば十分読み進められるでしょう

使用している数学のレベルも決して高くないため、この本に関しては高1、2の方にもお勧めできます。

厳密な解説よりも、ざっくりとした導入に重きを置いた内容になっているため、数日程度で読み終えることが十分可能です。ざっくりしている分、厳密さには少々怪しい点も含まれているようです。導入だと割り切ったうえで、次に紹介する参考書につなげるのが良いでしょう。

為近の物理基礎&物理 合格へ導く解法の発想とルール(波動・熱・原子)(学研)


微積を受験物理に導入しよう!という主題ですが、これはあくまでも力学、電磁気分野に関する話です。残る熱力学・波動・(原子物理)に関しては微積の考えを持ち込んでも、得られる恩恵はそう多くはありません。

これらの分野に関しては、天下り的に降ってくる公式群をいかにうまく使っていけるかに焦点を置きます公式群の導出を確かめるという方針で良いでしょう。その際に、クセがなく汎用性の高い本書を活用するとよいと思います。波動・熱・原子編の他に、力学・電磁気編もありますが、“微積推奨ルート”であればそこまでやらなくてもよいかと思います。

新・物理入門(駿台文庫)


“微積推奨ルート”の中核をなす1冊です。

ここでの「入門」とは決して「受験物理」のことを指しているのではなく、大学の学士課程以降で取り扱われる「物理学」の入門であるという意味です。

従って受験物理の範疇でいえば、最高レベルの難易度を誇る導入書になっています

読み進めるには、物理の知識もさることながら、微積分、三角関数、数列、極限などに関する数学Ⅲ相当の知識を必要とします。

最初は挫折してしまいそうに感じるかもしれません。しつこく何度も読んでみてください。自分の手も動かしつつ、数式を追ってみてください。

内容が厳密性を求めているがゆえにどうしても難しく見えてしまうのですが、その厳密性を一度身につければ、強力な武器になります。かつて天下り的に降ってきた公式がどのように系統立てられているのかがわかってくるでしょう。

ただし、前述のとおり熱力学・波動・原子物理に関しては踏み込み過ぎても得るものはあまり多くないことには留意しましょう。

少なくとも、受験物理に還元される内容は少ないと思われます。強いて言えば、これらの分野に関しては、例えば2014年度の大問3などの出題にあるように、波動分野における三角関数の運用が最も役立つことでしょう。
そういった役立ちそうな箇所を拾い読みしていただければ、これらの分野に関しては十分です。

新・物理入門問題演習(駿台文庫)


タイトルが指している通り、新・物理入門に対する演習書で、同じ著者によって書かれています。基本演習、実践演習、記述演習から成っており、はじめは基本演習だけでもよいかもしれません。

載っている問題群は相当にレベルが高く、最終的に本書がこなせれば、物理は敵なしというレベルまで達しうることでしょう

ただし、内容が問題の系統が受験物理から逸れ過ぎている、という指摘も一部聞かれますので、深入りはし過ぎない方が賢明であるかもしれません。

青本群(駿台)

ここまででお気づきの方もいるかもしれませんが、駿台は基本的に微積分を多用する傾向があります。

そのため、過去問も駿台の刊行する青本(特に、東工大と東大)は、解答・解説に微積を使用する仕様となっています。

青本の良いところとしては、通常の導出付きの解答に加えて、解説が非常に充実している点が挙げられます。出題された題材に関して、状況をさらに一般的にするなどして、より広い視点から考察・検討されています。

しかも、それが志望校の過去問になされるのですから、その価値は非常に高いといえるでしょう。ここまで紹介してきた“微積推奨ルート”との相性も非常にいいので、ぜひ有効に活用したいところです。

そういった内容からいっても、東工大物理の過去問は、“力試し”に使うよりも過去の出題の“分析”の手段として使うのが好ましいと思われます。もし“力試し”をしたいという人がいれば、駿台の主催する東工大実戦模試の過去問が「東京工業大学への物理(駿台文庫)」として出版されているのでこれを使うのがいいでしょう。模試実施時のデータや講評が詳しく掲載されていることからも、力試しにはもってこいです。

また、東工大の青本の題材を一通り使い切ってしまったらamazonの中古を活用して古い青本を入手する、若しくは東大の青本をやってみるのがいいでしょう。

いずれの場合も良問揃いであることは間違いありません。人によっては、「新・物理入門問題演習」よりも、こちらを先にやった方が肌に合う、という方もいるかもしれません。

2−3 公式重視ルート

橋元の物理基礎をはじめからていねいに(東進ブックス)


イメージを大事にした、超入門向けの「読み物」です。“公式重視ルート”では、微積を使用しない分、公式の導出や、公式の持つ物理的なイメージを大事に学習していく必要があります。その最初の足掛かりとしてはぴったりな本でしょう。

授業で習っているのと並行して問題なく読み進められるはずです。ざっくりしたイメージを掴んだうえで、次のステップに進んでいきましょう。

為近の物理 解法の発想とルール(学研)


“微積推奨ルート”でも紹介したものです。先ほどの「橋元…」とくらべてだいぶ網羅的になっています。いわゆる普通の教科書の、公式導出をわかりやすくしたものと思っていただければよいかと思います
クセもなく、しかもレイアウトや色使いが非常に見やすい。様々なレベルの方に広くお薦めできる1冊です。

物理のエッセンス(河合塾シリーズ)

ここまでの2冊は、公式群をひとつひとつ細かに見ていくことが主な目的でした。ここからは問題演習に向けた応用的な要素を入れていきます。

「物理のエッセンス」はそんな教科書レベルからそろそろ演習に入ろうかという人にとって“橋渡し”的な役割を果たす本になっています。解法の“エッセンス”がコンパクトにまとまっている良書ですが、薄い本としてまとめあげるために、解説が省略されている箇所が散見されます。内容に違和感を感じたら、迷わず別な参考書や教科書を参照しましょう。

名問の森物理(河合塾シリーズ)


「名問の森物理」は受験物理において、もっともメジャーといっても過言ではない問題集です。
一問一問、問題のセレクトと解答解説が非常に洗練されており、とても使いやすい1冊だと思います。「物理のエッセンス」と同じ著者によるもので、接続も非常にスムーズです。

ここまで到達できれば、東工大や旧帝大の物理は大方太刀打ちできるようになってくるでしょう。“微積推奨ルート”の方も、途中で分岐して取り組むのがお薦めです。

難問題の系統とその解き方物理(ニュートンプレス)


非常にレベルが高く、それでいて量も多いという古参の演習書です

解説もそもそも内容が難しいうえに、古い本なので白黒刷りであまり見やすいとは言えません。特に現役生の方であれば、この本に取り組めるのはごく一握りでしょう。オーバーワークになりそうであれば、ここをスルーして、過去問演習などに進むのも一択だと思います。

赤本群

「青本」の項でも触れたように、微積を使用しない場合の過去問演習はいわゆる「赤本」が中心になります。

とはいえ、解説の質は明らかに「青本」より劣ると思われますので、適宜「青本」を参照できたらなおよいと思います。

また、赤本を出版する教学社から「東工大の物理15カ年」が出版されています。手頃に過去問が遡れるようになりましたので、是非活用しましょう。

3.まとめ

東工大物理の特徴を踏まえた、攻略法をお伝えしてきました。

特に物理における微積分は大学に入ってからも使うので、今のうちに習得しておくと有利になります

大学以降そうした方面に進みたいという方(東工大志望者であれば、きっとそういう方が多いことでしょう)には特にお薦めします。

本記事を参考に東工大の物理を攻略してください!

著者情報

究進塾 編集局

究進塾 編集局
東京・池袋にある究進塾の編集局です。受験指導のプロが大学受験に役立つ情報をお届けしています。 大学受験対策コースはこちらからご覧いただけます。
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