古文が苦手な人が知っておきたい助動詞の覚え方について
古文の助動詞は「覚えろ!」と言われるもののなかなか覚えられないものですし、そもそも何を覚えて何を覚えなくてもいいのかがわかりにくいところでもあります。しかし、これを覚えないとセンター試験の文法問題も解けなければ、二次試験の訳の問題も解けません。ここでは助動詞の何を覚えたら良いかといったことや、覚え方を意味、接続、活用の順で説明していきます。
目次
1 覚えることは、意味、接続、活用の三つ
助動詞を覚えるとは、
①助動詞の意味
②助動詞の接続
③助動詞の活用
の3つを覚えることを言います。この三つはどれかが欠けてしまうと古文の読解に支障をきたしてしまうので、必ず三つとも覚えきらなければなりません。
「意味が重要なのはわかるけど、接続や活用って必要なの?」と思われる方もいらっしゃると思いますが、同じ文字でも違う意味を持つ時がかなり多く、それが助動詞なのか何なのか判断しないといけない時があるからです。
例えば、「(上人)……顔したる」「(きのふけふとも)思わざりしを」「わが父母ありとし思へば」の「し」は、前から順にサ変動詞「す」、助動詞「き」、助動詞「し」のなっていて、全て違う意味です。こういう時に判断基準となるのが接続や活用なのです。
1−1 表の丸覚えはしない
古典文法の教科書や参考書にはよく以下のような活用表が載っていますが、それをそのまま暗記するのは得策ではありません。
最終的には意味、接続、活用を覚えなければならないので、表を丸暗記すれば目標は達成できます。ただ、表の暗記では「「る」は「れ、れ、る、るる、るれ、れよ」と活用して……」というように助動詞を縦に見る力はつきますが、実際に古文を読む時は「単語が助動詞か活用語尾か」というところから考える必要があるので、いろいろな助動詞や用言などを横断的に見ていかなければなりません。
そのため、表で覚えるよりも意味や接続というくくりごとに覚えるのが良いです。
表の使い方としては、いったん覚えきった後、覚えたかどうか確認したり、授業中などにど忘れした時のチェックのために使うのが良いです。覚えるためのものというよりは確認用のものだと考えてください。
2 まずは意味を覚える
まずはじめに意味の覚え方から説明していきます。ここでは覚え方のコツなどをメインに説明していきますが、意味を覚えるには例文の中で覚える方が良いので、必ず手持ちの文法参考書にある例文を参照するようにしてください。
2−1 文法的意味を口に出して覚える
意味の覚え方ですが、これは「る」「らる」であれば「受身、尊敬、自発、可能」と言ったように、文法的意味を何度も口に出して覚えましょう。現代の使い方と比較してみたり、頭で考えながら覚えるのも良いですが、助動詞は個数も多いので、いちいち理論的に考えるよりもとりあえずリズムで覚え、古文を読むたびに助動詞の意味を確認していって実戦で定着させて行った方が早いです。
また、頭文字をまとめて覚えるのも有効で、意味がたくさんある「む」「むず」は「スイカ変えて(推量、意志、仮定、勧誘、婉曲、適当)」、「べし」は少し強引ですが、「スイカ止めて、鍵(推量、意志、可能、当然、命令、適当、勧誘、義務)」と覚えます。
また、「なり」は意味が「断定、所在・存在」のもの(例:この国の人にもあらず。月の人なり。 訳:この国の人間ではない。月の都の人間である。ともに断定)と「推定、伝聞」(例:男もすなる日記。 訳:男も書くという日記。伝聞)のものが2種類あります。この二つは接続や活用が異なりますので、しっかり区別しておきましょう。
2−2 「けむ」「まじ」は「らむ」「べし」の意味に近い
「けむ」の意味は「過去推量」「過去の原因推量」「過去の伝聞・婉曲」(例:死にけむこそあはれなれ。 訳:死んだとかいうのは不憫だ。過去の伝聞・婉曲)で、「らむ」(例:神のいますらむ 訳:神がいらっしゃるとかいう、伝聞・婉曲)の意味を過去にしたものになっています。
また、「まじ」(例:出づまじ。 訳:出ないつもりだ。打消意志)の意味は「べし」(例:この一矢に定むべし。 訳:この一矢で決着をつけよう。意志)の意味の否定になっています。このことを覚えておけば助動詞二つ分の意味を覚えなければならないところが一つ分で済みます。特に「まじ」は意味が多いので、「べし」の否定と覚えておくだけで覚える負担をかなり減らせます。
3 意味とは別に接続を覚える
3−1 接続ごとにまとめて覚える
助動詞一つずつ「「る」は未然形接続、「けり」は連用形接続……」と覚えていくのは効率的ではないですし、忘れやすいです。そのため、「未然形接続は「る」「らる」「す」「さす」……」といったように、接続ごとに覚えた方が良いです。
筆者のオススメは「もしもしかめよ」のリズムで覚えることです。「む、ず、じ、しむ、まし、まほし、る、す、らる、さす、むず、り(ここまで未然形接続)、つ、ぬ、たり、けり、たし、き、けむ(ここまで連用形接続)、らむ、めり、らし、べし、なり、まじ(ここまで終止形接続)なり、たり、ごとし、やうなり(ここまで連体形接続)」とリズミカルに覚えましょう。
Youtubeでも歌い方があげられていますので参考にしてみてください。
「なり」が2回出てきますが、断定の「なり」は連体形、体言接続、推定の「なり」は終止形接続なので区別しておきましょう。
3−2 例外をおさえる
3−1のように覚えてしまえばほとんどの助動詞の活用は覚えられますが、二つ例外があります。
一つ目は「き」ですが、普段は連用形接続ですが、カ変とサ変に接続するときは未然形にも接続します。
二つ目は「り」です。これはサ変の未然形、四段の已然形に接続します。「さみしい(サ未四已)」と覚えましょう。
この二つは特殊なので、しっかり覚えておきましょう。
4 一つずつ活用を覚える
4−1 特殊なものから覚える
まずは特殊な活用をするものから覚えます。特殊な活用にも2タイプあります。
①変化しない「じ」「らし」
②変わった変化をする「き」「ず」「まし」
①の方は全く変化しないので覚えなくて良いですが、②は覚えないといけません。
まず「ず」ですが、これは命令形がなく、順番に「ず、ず、ず、ぬ、ね、⚪︎」となっています。また、それだけでなく「ざら、ざり、⚪︎、ざる、ざれ、ざれ」という活用もします。後者はラ変の活用をしていますが、前者は「ず」独特のものですのでしっかり覚えておきましょう。
また、⚪︎は、「ラ変型」など決まった活用の形を持つものに関しては、そこが⚪︎になっていることを覚えておく必要はないです。今出てきたもの以外にも⚪︎のある活用をする助動詞はいっぱいあるので覚えてもキリがないです。
また、例えば「ず」の終止形に「ざり」がないと覚えていなくて連用形か終止形か迷った時としても、「ざり」の次に来ている語を見れば用言に係っているというのがすぐわかるといったように、⚪︎だと知らなくても次の単語を見れば一発でわかります。「ず」は単に「ラ変型の活用をする」とだけ覚えていれば十分です。
ただ、「き」と「まし」に関しては決まった活用の形がないので、⚪︎を入れて覚えないと途中が抜けたりして混乱するので、⚪︎入りで覚えければなりません。
次に「き」ですが、これは未然。連用、終止、連体、已然、命令の順に「せ、⚪︎、き、し、しか、⚪︎(⚪︎は存在しない活用)」となっています。「迫るキシシカ丸」と覚えましょう。
最後に「まし」ですが、これは順番に「ましか、⚪︎、まし、まし、ましか、⚪︎」となります。これもなんども唱えて覚えるのが良いでしょう。
以上三つは何度も唱えて必ず覚えましょう。
4−2 あとは用言の活用を当てはめていく
残りの助動詞は、用言の活用でやったものと同じですので、それを当てはめていけば良いです。
「べし」や「まじ」など、「し」「じ」で終わるものは無変化の「らし」と特殊な変化をする「まし」を除けば全て形容詞型だったり、「しむ」を除く「む」で終わるものは全て四段型だったりとある程度のまとまりがあります。
ここで注意して欲しいのが、「なり」で、断定の方は形容動詞型ですが、推定の方はラ変型です。断定の意味を持つ「たり」は形容詞型の変化をし、推定の意味を持つ「めり」はラ変型の変化をするので、同じ意味を持つ助動詞とセットで覚えれば混同するのを避けられます。
5 どうしても覚えられない人は教科書の文章の品詞分解をしてみる
どうしても覚えられない理由としては、「そもそも暗記が嫌い」「活用が「れ、れ、る……」といったような無機質なものばかりで頭に入ってこない」「暗記する意味が感じられない」など様々だと思います。そういう時は文法の参考書や辞書を使いながら教科書などに載っている古文を品詞分解して、一語一語意味を考えながら訳していくのが良いです。
こうすることで、教科書の文章そのものが例文として頭に入ってきます。また、助動詞がわからないと訳せないので、助動詞の重要性が実感できます。辞書や文法書があるとはいえ少し難しいかもしれませんが、はじめの一歩には最適です。正しいかどうか不安だったりわからないところがあれば、先生や友人に聞いて確認してみてください。
6 まとめ
ここでは助動詞の意味、接続、活用の覚え方を説明していきました。ここまで読んでいただければ助動詞が格段に覚えやすくなったと思います。助動詞をしっかりと覚えて、読解への足がかりにしていきましょう!
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