一番最初に知ってほしい物理の正しい勉強法について
理系なのに、「物理」と聞くだけで苦手意識を持ってしまう受験生もいることでしょう。
その理由のひとつは、物理は地歴公民の勉強のように、暗記をすればするだけ成績が上がる教科ではなく、勉強をしてもしても結果に繋がらないことが多いからです。
その原因は、ひとえに正しい勉強法を理解していないからです。
では早速、正しい勉強法を見ていきましょう。
目次
1.公式を正しい方法で覚える
化学や生物などの他の理系教科に比べて、物理は覚えなければならない内容は圧倒的に少ないです。それゆえに正しく計算をする能力や、とっさにどの公式を使うのかを引き出せる力は必須と言えます。
要は、公式を「正しく」使えるようになる必要があるということです。
当然ながら大学入試のテストで、公式を書かせるような問題が出題されることはほとんどないので、公式を「使える知識」としてインプットすることが必要不可欠です。
そのために意識するべきポイントを紹介していきます。
1-1. 文字の意味を理解する。
物理を使って受験する受験生なら誰でも知っている公式に、運動方程式『F=ma』というものがあります。
多くの受験生は『F=ma』という風に覚えていて、それ自体は全く悪いことではないのですが、文字の意味まで同時に覚えて初めて意味があります。
どういうことかというと、
ということまで理解する必要があるということです。
ここまで覚えて初めて「公式を覚えた」と言えますし、文字の意味を無視するとただの呪文と化し、実際に使える知識になりません。
1-2. 単位を意識する
これは先ほど紹介した、「文字の意味を理解すること」の延長線上とも言えるかもしれませんが、単位を意識することもとても大切です。
単位(SI)には大きく分けて、基本単位と組単位、さらに接頭語の3つがあります。
7つの基本単位(m、㎏、s、A、K、mol、㏅)によりすべてのSI組単位(㎩、J、Wbなど)の書き換えが可能で、これにより一部の組単位どうしの関係を導くこともできます。
例えば、力の単位であるN(ニュートン)は、m(kg)×a(m・s^-2)で表されます。
問題が力の大きさを聞いているのに、ディメンジョンがm^2(kg)^2×a(m・s^-2)などの単位だと、明らかに間違っているということがわかります。
最初は感覚的にわからないかもしれませんが、慣れてくれば一目で単位がおかしいことがわかります。
その感覚を養うだけで共通テストでは正解を導き出せる問題も多いですし、筆記試験でもケアレスミスを圧倒的に減らすことができます。
1-3. 公式を導き出せるようにする
高校物理の範囲では必ずしもすべての公式を導き出せるわけではありませんし、物理学という学問の特性上、実験結果ありきの公式なので、多少は割り切って覚えなければならない公式があるのは事実です。
しかし、だからといって全部の公式を丸暗記するのはおすすめできません。
できるものは導出できるようにしておくべきです。
公式を導出できるようにしておけば、その公式の意味や使い方がわかるので、丸暗記よりも圧倒的に使える知識になります。
2.まずは「力学」をマスターする
物理を受験に使う受験生であればご存知だと思いますが、高校物理は「力学」「電磁気学」「波動」「熱力学」「原子」の5つの分野から構成されます。
このうち「原子」は量子力学を用いた考え方をしますが、他の4つの分野は古典物理学を使って考えていきます。
その古典物理学の基本となるのが「力学」で、量子力学を理解する上で古典物理学は必須なのです。つまり、すべての基本が力学なのです。
<<高校物理のおすすめ勉強順>>
①力学
②電磁気学
③波動
④熱力学
⑤原子
まず力学をマスターすべき理由は大きく分けて2つあります。
2-1. 力学は他の分野でも使う
力学は古典物理の基礎なので、電磁気学や波動、熱力学などの、古典物理を使った学習をする分野でも使います。
したがって力学がわかっていない状態で電磁気学などに取り組んでも、土台がしっかりしていないので理解できませんし、定着もしません。
電磁気や波動、熱力学は感覚的に理解しづらいので、感覚的に理解しやすく、なおかつ他の分野の土台になっている力学から学習をスタートすることをおすすめします。
2-2. 力学はどんな大学でも必ず出題される
前述の通り、高校で学習する物理の内容は「力学」「電磁気学」「波動」「熱力学」「原子」の5つですが、多くの大学の入試は3題構成です。
その場合ほとんどが、1題が力学からの出題、1題が電磁気学からの出題、1題が波動か熱力学か原子物理からの出題となります。すなわち、力学と電磁気学は100%出題されるということです。
よって優先順位1位なのが、力学なのです。
3.各分野の具体的な勉強法
ここまでで、公式を覚える時のポイントや、まず最初に力学の勉強を極めることの重要性をお伝えしてきました。
ここからは、「力学」「電磁気学」「波動」「熱力学」「原子」のそれぞれについて、詳しい勉強法を見ていきます。
具体的な流れは「教科書や参考書でインプット」→「問題集で演習」がベストですが、ここからは、「力学」「電磁気学」「波動」「熱力学」「原子物理」のそれぞれについて、詳しい勉強法を見ていきます。
3-1. 力学編
まず最初は力学です。力学は一通り学習すればわかりますが、パターン的な典型問題が多く出題される傾向にあります。
最初から難しい参考書や問題集から手をつけるのではなく、初めは易しめのものから取り組み、しっかり基礎を固めることからスタートしましょう。
特に
・二体問題
・単振動
の二つは超頻出なので、特に重点的に学習をしておくべきです。
力学の問題に取り組むときは、「図を描き、かかる力をすべて図示すること」がとても重要です。
「どこにどんな力がかかるかがわからない」という受験生がいますが、力学では”重力”と”物体と何かが接する点に働く力”しか出てこないので、それを意識して図示していきましょう。
3-2. 電磁気学編
続いては、力学と同じく高校物理の超重要分野である電磁気学です。
電磁気学では、
・電磁誘導
・交流回路
の2つが頻出です。
電磁気学の問題も、力学と同じく「かかる力を図示すること」がとても大切です。
電磁気の場合は、かかる力は”重力”、”物体と何かが接する点に働く力”、”電磁場による力”の3つなので、抜けがないようにしましょう。
また、電磁気は学校の授業の進度が遅く、学校で習った直後に入試本番が迫っていることも多いので、少し独学で学習を進めておき、学校の授業を復習に使うくらいがちょうどいいでしょう。
3-3. 波動編
波動でよく出題されるのは、
・ドップラー効果
・光の干渉
の二つです。
特にドップラー効果の公式の導出問題は、難関大学ではとてもよく出題されます。
自力で2〜3回導出しておけば十分できるようになるので、普段から練習をしておきましょう。
光の干渉については、ニュートンリングや複スリット問題など様々な種類がありますが、形が変わっただけで本質は一切変わりません。
波動問題のポイントは一つ、常に「位相のずれ」を意識することです。
この視点を持って学習に取り組めば、習得は早いでしょう。
3-4. 熱力学編
熱力学については、基本的かつ重要な考え方があります。それは、「系全体を巨視的に見る癖をつける」ということです。
みなさんご存知の通り、空気というのはたくさんの粒子からできています。
その粒子一つ一つの動きを解析的に説明することはあまりにも困難なため、「空気全体ではこんな風になります」とマクロに説明するのが熱力学なのです。
ですので、熱力学の学習をするときは、巨視的に見るということを意識的に行っていきましょう
3-5. 原子編
最後は、長らく高校物理の範囲に入っていなかった原子物理です。
原子物理は他の4つの分野と根本的に異なり、古典物理学の考え方が一部適用されない範囲です。
「量子力学」と聞くとアレルギーが出そうになるかもしれませんが、覚えなければならない公式は10個程度です。そこまで難しい問題が出題されるわけではないので、捨ててしまうのはあまりにももったいないです。
この分野は出題率も高くないですし、難しい問題が出題されるわけでもないので、公式の丸暗記と演習を少しで十分でしょう。
4.まとめ
苦手な受験生が多い物理ですが、正しく勉強を進めれば確実に得点源にできる教科です。
・公式は導出できるようにする
・まずは力学からマスターする
これらのことを意識して、しっかり物理で合格点をもぎ取りましょう。