医学部合格を目指すなら知っておきべき英語対策の基本
医学部入試では、国公立・私立ともに英語のウエイトが重く、競争相手と差をつける科目になります。
でも、医学部対策の勉強法については、巷ではさまざまな意見があり、なかなか自分のやり方に自身が持てない人も少なくないのではないでしょうか。
じっさい、「医学部 英語 対策」などで検索すると、記事ごとに真逆の勉強法が推奨されていたりします。
「医学系の英単語を覚えるべし」 v. s. 「意外と医学系単語を知らなくても合格ラインには乗れる」
「長文から練習すべし」v. s. 「頻出の整除問題から練習すべし」
「医学部独自の英語勉強法が必要」v. s. 「基本は他の学部の入試と同様の勉強で十分」
などなど。
で、結局何が正しいの?と不安に思う学生も多いでしょう。
しかし、身も蓋もないようですが、正解なんてありません。
個々人の基礎力、英語への苦手・得意意識、勉強を始める時期、志望する大学の傾向など、さまざまな偶然の要因が絡み合うため、第三者から指南できる正解の勉強法なんてそもそもないのです。
では、どうすれば良いでしょうか?
何よりも大事なのは、自分で自分のやり方が正しいかどうか、自分の状況に適しているかどうかを判定する基準をもつことです。
誰かにお勧めされた一般的な勉強法を信じ込むのではなく、常に自分にとってベストな選択肢を吟味するまなざしをまずは身につけるのが肝要です。
そこで、勉強法の判定基準と判定方法を具体的に解説していきましょう。
目的は「効率化」
まずは、勉強法を吟味する目的を明確かつ単純にします。
それは、もっとも効率のよい仕方で学習することにあります。
医学部入試の特徴として、他の学部に比べて受験生のモチベーションが高く、浪人生も比較的多く、競争が激しいという点があります。
そのため当然、「やる気」や「勉強量」といった真っ向勝負でライバルに差をつけるのは難しくなります。
特に現役生は、浪人生に比べて勉強に割ける時間が少ないため、愚直に頑張っても勝ちにくいシチュエーションにあります。
だから、いかに効率的に学習を進めるかがきわめて重要な要素になるのです。
すべての科目についてそう言えますが、英語(や国語)はとくに、確実に点数をあげるメソッドが(理系科目に比べれば)少ないため、効率的な学習がますます重要です。
医学単語を覚える必要はある?
では具体的に、効率化のためにどのような勉強法を採用するべきでしょう?
まずは単語に関するよくある悩み、「医学専門用語を覚えるべきか」について考えましょう。
ここで専門用語というのは、基本的には病名(「胃炎gastritis」「ウィルス感染症viral infection」「結核tuberculosis」など)や療法の名称(「原因療法causal treatment」「対症療法symtomatic therapy」「認知行動療法cognitive behavioral therapy」など)のことです。
ある人によれば、医学用語は「医学部受験に必須」とみなされ、別の人によれば「最後にちゃちゃっと覚えるくらいでよい」とみなされます。
どちらが正しいということもなく、単にアプローチの違いだと思いますが、それでもやはりどちらがベターか気になってしまうのが受験生というもの。
まずはっきりしていることは、「医学用語を全く知らなくてもよい」と判断する人はいない、ということです。
優先順位には人によって差異がありますが、多少とも医学用語に触れておく必要があるという見解にはコンセンサスがとれます。
では、どのような段階で医学用語に手をつければ良いのか。
もっとも効率的な流れは、次の3段階で学習することでしょう。
(1) 普通の学部受験と同じ基本単語を覚える
(2) 身体の部位に関する単語を確実に覚える
(3) 過去問を解き、知らない医学用語は必ず復習して覚える
ポイントは、(1)~(2)までは普通の受験生と同じ勉強をするということ。
医学部志望といえど共通入試は受ける場合がほとんどですし、その意味でも一般的な語彙の勉強は欠かせません。
ただし、ステップ(2)はちょっと具体的な部分です。
医学用語とまでは言えませんが、まずは「身体の部位」(「胃stomach; gaster」「瞳pupil」「動脈arterial」など)を重点的に覚えましょう。
大事なことは、ここで医学用語についての学習をするわけではなく、あくまでも日常的な単語を身につけることです。
医学専門用語は「がんcancer」のような英語的なものから、「記憶障害amnesia」のようなギリシア語由来のもの、「破傷風tetanus」のようなラテン語由来のものなどが混在していて、とても覚えにくいものです。
でも、医学部の長文で難しい病名が登場したとしても、文脈的に「どこの部位」に関する「どんな症状」なのかがわかれば、話題についていくことはできます。
逆に、身体部位の名称を知らないと、病名を覚えることも余計に難しくなります。
そのため、まずは身体部位をしっかり覚えておくことが最優先なのです。
身体部位をしっかり覚えたら、残るはステップ(3)で、過去問演習を通じて実際に出題された医学単語を身につけていきましょう。
英文法の知識などを確認することも重要ですが、「単語」そのものに目を光らせることも大事です。
ここまでやれば、(複数の大学の過去問を複数年分解くことが前提ですが、)最低限の医学単語を押さえたことにはなるはずです。
これでまだ余裕があれば、医学用語向けの単語帳などを購入し、応用的な単語をどんどん身につけていけばよいでしょう。
ただし、他の科目との勉強のバランスを考えて、必要以上にのめり込む必要はないはずです。
長文対策はどうすればいい?
医学部の入試は、比較的長めの読解問題が出題される傾向にあります。
しかも、既述のように、しばしば専門用語的な難しい単語も登場します。
そのため受験生のなかには、ちょっと肩に力が入ってしまって、医学部独自の長文勉強法があるのかを気にする人もいます。
よく言われる医学部対策の勉強法は、「新聞や新書を呼んで、頻出の病気や治療法についての基礎知識を身につける」という類のものです。
でも、はっきり言えば、特に医学部だからといってこうした教科書外の勉強が必要なわけではありません。
経済学部を受験するのにケインズを知らなくても構わないように、医学部受験にも医学の基礎知識を別途仕入れる必要はないです。
もちろん、医学の基礎知識をもっていれば、長文が読みやすくなるのは事実です。わずかな単語や文章から、「ああ、この話ね」と了解できるからです。
また、新聞や新書に目を向けることは、それ自体として推奨できる立派な行いです。
しかし、第一にそれは問題を解くために優先順位の低い事柄です。
何よりも基礎単語と基礎文法、そして普通の(全学部に共通する)英文を素早く正確に読む訓練、これが最優先の課題です。
なまじ背景知識から話がわかってしまうことよって英文を雑に読む癖がついてしまう残念なケースもあります。
そして第二に、必要最低限の背景知識は過去問から仕入れることができます。
すでに述べたように、医学部入試では、過去問演習を通じて医学用語を習得することが重要です。
それと同じで、基礎知識についても、過去問を情報源とすることができます。
知らない病名や治療法を目にしたら、「英単語」として記憶するだけでなく、それがどんな症状をもつ病気で、どういう場合に発症しやすいのか、どういう合併症をもちやすいのか…等々、調べてみましょう。
これらのことは必ずしも本気で暗記する必要はないので、なかば息抜き的にトライしてみましょう。
やや見落とされがちな点ですが、一般的に、過去問はその学部に求められる知識を供給する大事な情報源です。
文学部では批評や思想の知識が、政治学部では社会問題や政治理論の基礎知識が、しばしば過去問の中に登場します。
これは問題を解く上で必須のものではないですが、やはり知っておくと得なもの。
過去問演習時に、ぜひ身につけておくとよいでしょう。
まとめ
医学部受験は効率的な勉強法が最重要です。
さまざまな勉強法の情報が出回っていますが、まずは自分の状況を見定めて、自分で判断できるようにしましょう。(もちろん、先生や先輩への相談も推奨)
医学用語については、余裕がある場合のみ単語帳などで予習をしましょう。
基本は「身体部位」の単語をマスターして、あとは過去問を通じて単語を蒐集しましょう。選択問題から長文読解まで、知らない単語に目を光らせてください。
医学の基礎知識があれば、長文読解において有利な条件を作れます。しかし、他に優先度の高い勉強を押しのけてまで学習することはありません。
そして、過去問を主なソースとして、知識を身につけましょう。
一般的に言えるのは、医学部という特殊な学部だからこそ、過去問を最大限に活用するのがよいということです。
出題傾向を知ることにもなるし、医学部に求められるディシプリンを受け取る機会になります。もちろん基礎を欠いてはいけないし、ただ数をこなせばいいわけでもないですが、身体をならすようなイメージで、さくさくと過去問を進めるのがお勧めです。