物理の波動を攻略する勉強法

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高校物理は、力学、電磁気学、熱力学、波動、原子物理の5つに大別されます。

その中でも理系の大学入試の二次試験では、力学と電磁気学は必ず出題され、熱力学と波動、原子のいずれか1題が出題されるのが一般的です。

今回は波動の勉強法を見ていきますが、毎年必ず出題される分野ではないので、どうしても優先順位が下がってしまっている方が多いはずです。

しかし、共通テストでは必ず出題されますし、波動分野に関してはそこまで難しい問題が出題されるわけではないので、短い対策時間で効率的に得点源にすることができます。

波動の勉強や対策に時間をかけるのであれば力学や電磁気学の勉強に時間をかけたいと思いますし、数学や英語の勉強にも時間をかけたいと思います。

ですので、今回は「短い対策時間で効率的に得点源にする」ということにフォーカスして、波動の勉強法を見ていきましょう.

1.波動分野が苦手になる原因と対策

波動分野が苦手になる原因は大きく分けて、3つあります。

それぞれを詳しく見ていきましょう。

1-1. イメージがしづらい

空気中を音が伝わっている状況を考えてみましょう。波動を少しでも勉強をしたことがあれば、「媒質は進まない」というのは聞いたことがあるでしょう。

*媒質とは、その波が伝わる空間を占めている物質のことです。今回の媒質は空気ですね。

この媒質は、上下に振動をするだけで、横方向には動きません。それがなかなかイメージできず、最初からつまづいてしまう受験生が多いようです。

ここはそこまで深く突っ込んだ問題が出題されるわけではないので、割り切ってそういうものなんだと思ってしまうのがいいと思います。

1-2. 位置xのグラフと時間tのグラフの意味がわからない

波動の分野を学習し始めると、下のようなグラフを目にしたことがあるでしょう。

画像

(出典:進研ゼミ高校講座)

具体的に言うと、どちらも縦軸には変位yが取られていますが、横軸が異なっています。

一方は位置xが横軸に取られ、もう一方は時間tが横軸に取られています。

どちらも正弦波(y=sinθの形)なので、注意して見ないと間違えてしまいます。

ここで、一つポイントがあります。横軸にxが取られている場合は時間tが固定で、横軸にtが取られている場合は位置xが固定なのです。

時間tが固定というのは、(例えば)t=0の時のグラフを描いていますよ。

位置xが固定というのは、(例えば)x=0という点での変位を描いていますよ。

ということなんですね。

波を考察するときは”媒質の運動”と”媒質どうしの伝播”の2つを調べる必要があり、前者のために位置固定で時間変化を考察し、後者のために時間固定で媒質の伝播(波形)を考察します。

これらのポイントと、波の周期Tと波長λをグラフから読み取れば(問題文で与えられている場合もある)、この手の問題は簡単に解けるようになります。

これらのポイントを押さえて、3問ほど問題を解いてみてください。びっくりするほどスラスラ解けることだと思います。

1-3. 出題パターンを理解していない

大学入試の波動の問題は、出題パターンが限られています。

基本的な波の性質は当然ながら理解しておくべき内容ですが、それ自体が出題されることはほとんどありません。

波動の問題で出題されるのは主に二つで、そのうちの一つはドップラー効果の問題。もう一つは光の干渉の問題です。

ドップラー効果の問題は、特に難関大学の入試では、公式を覚えているだけだと解けない問題が出題されます。ドップラー効果の公式の導出原理を問われることが多いので、これは特に対策が必要です。

光の干渉の問題は、ヤングの実験、回折格子、薄膜の干渉、くさび形空気層、ニュートンリングからの出題がほとんどです。こちらの公式導出問題は程度が軽いので、一度みておけば十分解けるでしょう。5種類しかないので、経路差や光路差、位相差に注意して公式を覚えるのがポイントです。

2.おすすめの勉強法

波動が苦手になってしまう原因と、その対策方法を紹介していきました。それらを踏まえて、波動のおすすめの勉強法を見ていきましょう。

波動も他の分野と変わらず、教科書や参考書でインプットをする→問題集でアウトプットをする、という流れが基本になります。

しかし波動分野では、他の分野と比べて覚えるべき公式が圧倒的に少ないので、問題集でアウトプットをすることがどうしても中心になってきます。

では、それぞれについて詳しくみていきましょう。

2-1. 教科書や参考書を使って公式を覚える

まず最初にやるべきことは、教科書や参考書を使って公式を覚えることです。

先ほども伝えたように、波動分野は特に公式が少ない分野なので、時間をかけずにパパッと覚えていきましょう。

基本的に物理の公式を覚えるときは、

①文字の意味や単位も合わせて覚える
②公式を導出してみる
③公式の意味を考え、日本語に解釈する
④公式を使えるようにする

の4つを意識しましょう。

特に、光の干渉の5つ(ヤングの実験、回折格子、薄膜の干渉、くさび形空気層、ニュートンリング)は、強め合う条件などの公式が似ているので、混乱しないようにすることさえできれば、ここでつまづくポイントはありません。

最初はある程度大雑把でもいいので公式を頭に叩き込んでから、「④の公式を使えるようにする」というポイントを重点的に取り組んで、完璧を目指しましょう。

また、難関大学を志望している受験生が必ず抑えておくべきなのが、ドップラー効果の公式導出です。

これは公式を暗記しているだけでは全く対応できないので、ドップラー効果の公式導出は必ずできるようにしておきましょう。

なお、使うのは基本的に教科書で構いません。参考書では省略されがちな基本的な公式の導出が載っており、教科書は意外に有用性が高いです。

ただどうしてもまとまっておらず使いづらいと感じる受験生もいると思うので、そういった方は

物理のエッセンス

を使うことをオススメします。

物理のエッセンスの特徴としては、身近な現象や一般常識からの導入が丁寧で、高校物理の範囲で導出ができるものは導出を行い、そこから公式を用いた例題と練習問題、そして演習問題の順で進んでいきます。

先ほど述べた、物理の公式を覚えるための4つのポイントを全て網羅しながら、まだほとんど物理の学習をしたことがない初学者の方でも無理なく取り組めるような工夫がなされている良書なので、ぜひ一度書店で手にとってみてください。

物理のエッセンスで、難関大学を含む全ての大学合格のための基礎基本を手に入れることができます。

2-2. 問題演習をする

教科書や参考書を使って公式の暗記を終えたら、実際に公式を使う練習に入っていきます。波動分野の特徴としては、稀に屈折の法則が出題されることもありますが、入試で出題される問題が光の干渉の5パターンとドップラー効果の導出でほとんどを占めるということです。

正直、出題されやすい問題がわかっていたら対策も立てやすいですし、恐れるに足りません。学校で配布されている汎用問題集(リードα物理基礎+物理、セミナー物理基礎+物理など)を使って、着実に力をつけていきましょう。

何度も言いますが、ポイントは光の干渉とドップラー効果です。

汎用問題集の問題が全て解けるようになったら、

重要問題集

名問の森


に取り組んでいきましょう。ここまでできるようになれば、入試では怖いものなしです。

特にこの2冊をおすすめする理由を紹介していきます。

2-2-1. 重要問題集

公式を暗記したのち、公式を自由に使えるようになるための練習台として、学校で配布される教科書汎用問題集に取り組みます。この汎用問題集は、レベルとしてはそこまで高くなく、汎用問題集が解けるようになっても実際の入試問題にはほとんど太刀打ちができません。

それは汎用問題集が、入試問題をカバーできるほどレベルの高い問題集ではなく、公式を使いこなせるようになることを目的とした参考書だからです。

そのレベルから、一気に難関大学の入試レベルまで引き上げてくれるのがこの重要問題集です。

ある程度網羅性も高く、物理の入試で問われる典型的な問題がすべて収録されています。また、この問題集に載っている問題が、もともと入試問題として使われている問題ばかりであることに加え、レベル別にA問題、B問題と分かりやすく区別があることから、どのレベルの大学を志望している受験生にも使いやすい問題集と言えます。

東大や京大、東工大で物理を得点源にしたい受験生は、この後にさらに難しい問題集に取り組むことも一つの手ですが、基本的にほとんどの受験生はこの問題集をスラスラ解けるようになれば、物理で足を引っ張ることはなくなります。

2-2-2. 名問の森

重要問題集に続いて紹介するのは、物理の問題集としてとても有名な名問の森です。

こちらは重要問題集よりも若干難易度が高く、旧帝国大学レベルの問題が多数収録されています。これだけ聞くと、「さぞかし難しいのだろうな」と感じるかもしれませんが、そんなことはありません。

この名問の森の著者は、物理のエッセンスの著者でもある方なので、物理のエッセンスを理解できていれば、スムーズに理解することができます。

高校の授業で習う分かりやすい考え方で、難関大学入試へのアプローチをしてくれるので、物理が得意ではない受験生でも、無理なく力をつけていくことができる良書です.

3.まとめ

今回は、波動分野のおすすめの勉強法を紹介してきました。

基本的な学習の流れは他の分野と変わらず、公式をインプットしてから問題演習でアウトプットをしていく流れになります。

ただ、波動分野は出題される問題がほぼ決まっており、対策も立てやすく、簡単に得点源にできる分野です。今回紹介したことを生かして、波動分野をしっかり得点源にし、受験を優位に戦えるようにしていきましょう。

著者情報

究進塾 編集局

究進塾 編集局
東京・池袋にある究進塾の編集局です。受験指導のプロが大学受験に役立つ情報をお届けしています。 大学受験対策コースはこちらからご覧いただけます。
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