これでわかる!数列のシグマΣの計算方法を徹底解説

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数列のシグマ$\Sigma$の計算を苦手としている人はかなり多いです。シグマの記号は数列の和を表す記号(総和記号)です。

数列の和を求める問題はセンター試験をはじめ、毎年多くの大学でも出題されています。多くの受験生が苦手とする群数列はこのシグマの計算が鍵となります。

ここではシグマの公式の紹介にとどまることなく、その具体例を豊富に取り入れながら説明していきたいと思います。センター試験でよく問われる群数列についても解説します。この記事では受験勉強を始める前に最低限覚えておきたいことについて解説していきます。

1 $\Sigma$の意味

$\Sigma$ はギリシャ文字でシグマと読みます。アルファベットで $S$ にあたる文字です。これは高校の数学では数列の和を表す記号として用いられます。
例えば次のような等差数列、$1,\: 2,\: 3,\: 4,\: \cdots,\: 9,\: 10$の和は、

\[1+2+3+4+\cdots+9+10\]

と書けますが、これを省略しようと思ったときに登場するのがシグマ$\Sigma$です。
一般に一般項が $a_n$ である数列 $\{a_n\}$ の第 $i$ 項( $i$ 番目)から第 $j$ 項( $j$ 番目)まで和を $\Sigma$ を用いて表す場合、その和$S$は

\[S=a_i+a_{i+2}+\cdots+a_j=\sum_{n=i}^j a_n\]

と表します。ここで気をつけるべきポイントは数列の一般項が何かということと、何番目から何番目までの項の和を考えるかをはっきりさせることです。

$\Sigma$ の横には一般項を、 $\Sigma$ の下には始めが何番目かを、上には終わりが何番目かを書くようにします。特に大学受験では、一般項が $a_n$ の数列の第 $1$ 項から第 $n$ 項までの和 $S_n$ を求めよ、という問題が多いので、この場合に、その和を $S_n=\displaystyle \sum_{n=1}^n a_n$ と書きたくなります。

しかし、 $\sum$ の下で $n=〇$ と書いてしまうと $\sum$ の上の $n$ と混同してしまうので、 $\sum$ の下は $k=〇$ と書き、それに伴い、一般項の式も $n$ をすべて $k$ に変えて、 $S_n=\displaystyle \sum_{k=1}^n a_k$ と書くようにしましょう。例えば、一般項が $a_n=1+n$ の数列の第 $1$ 項から第 $n$ 項までの和 $S_n$ を $\Sigma$ を用いて表す場合は $\displaystyle S_n=\sum_{k=1}^{n}(1+k)$ となります。この場合、括弧( )を忘れないようにしましょう。
さて、ここまでで、 $\Sigma$ の記号の意味は理解できたと思います。

◇まとめ◇

数列$\{a_n\}$の一般項が$a_n$の場合、第〇項から第△項までの和は

$$\sum_{k=〇}^△ a_k$$

と表します。ここで$a_k$は$a_n$に$n=k$を代入したものです。

 

2 覚えるべき公式

数列の$\Sigma$の計算が苦手な受験生は多いですが、覚えるべき公式は少ないです。具体例とともに説明していきます。

2-1 等差数列の和

初項が$a$、公差が$d$、末項(最後の項)が$l$、項数が$n$であるような等差数列の和$S_n$を考えます。この和は次の公式によって与えられます。

$$S_n=\dfrac{1}{2}n(a+l)$$
さて、$l$は初項が$a$、公差が$d$の等差数列の第$n$番目の項なので、$l=a+(n-1)d$と書くことができます。よって$S_n$は

$$S_n=\dfrac{1}{2}n\{a+(a+(n-1)d)\}=\dfrac{1}{2}n\{2a+(n-1)d\}$$

と書くこともできます。
特に、初項が$1$、公差が$1$、末項が$n$であるような数列、$1,2,3,\dots ,n$の和$S_n$は

$$S_n=1+2+3+\dots+n=\dfrac{1}{2}n(n+1)$$

と書くことができます。
また奇数の数列$1,3,5,\dots,2n-1$は初項$1$、末項$2n=1$、項数$n$の等差数列なのでその和$S_n$は

$$S_n=1+3+5+\cdots+(2n-1)=\dfrac{1}{2}n\{1+(2n-1)\}=n^2$$

と書くことができます。

2-2 等比数列の和

次に等比数列の和を考えます。初項が$a$、公比$r$、項数$n$の等比数列の和$S_n$を考えます。
このとき公比$r$が$1$である場合とそうでない場合で公式が異なるので注意が必要です。
まずは$r\neq 1$である場合を考えます。

このとき、

$$S_n=\dfrac{a(1-r^n)}{1-r}$$

です。分母と分子の両方に$-1$を掛けると

$$S_n=\dfrac{a(r^n-1)}{r-1}$$

となります。

$r>1$の場合は下の公式を、$r<1$の場合は上の公式を用いると計算ミス(符号ミス)が防げますが、慣れていない場合は上か下のどちらか一方だけ覚える、というのでも大丈夫です。

ここで気をつけるべきことは$r^n$の$n$は「項数」を表していることです。常に$n$である、ということではないので注意するようにしましょう。一方で、$r=1$である場合は

$$S_n=\underbrace{a+a+a+\cdots+a}_{n個}=na$$

となります。このままでは少々わかりにくいので、具体例を考えます。

□例1□

(1) 初項$1$、公比$2$、項数$n$の等比数列$n$の等比数列の和$S_n$は

\[S_n=\dfrac{1\dot{(2^n-1)}}{2-1}=2^n-1.\]

(2) 初項$4$、公比$-2$、項数$n$の等比数列の和$S_n$は

\[S_n=\dfrac{4\{1-(-2)^n\}}{1-(-2)}=\dfrac{4}{3}\{1-(-2)^n\}.\]

(3) 初項$5$、公比$1$、項数$n$の等比数列の和$S_n$は

\[S_n=n\times 5=5n.\]

となります。この場合は公比$r=1$なので注意が必要です。

2-3 累乗の和

次に累乗の和について扱います。

大学入試で覚えるべき累乗の和の公式は自然数の$2$乗の和と$3$乗の和の公式です。まずは$2$乗の和の公式を説明します。
次のような和

$$S_n=\sum_{k=1}^{n}k^2=1^2+2^2+3^2+\cdots+(n-1)^2+n^2$$

は次によって与えられます。

$$S_n=\sum_{k=1}^{n}k^2=1^2+2^2+3^2+\cdots+(n-1)^2+n^2=\dfrac{1}{6}n(n+1)(2n+1)$$

一方、$3$乗の和

$$S_n=\sum_{k=1}^{n}k^3=1^3+2^3+3^3+\cdots+(n-1)^3+n^3$$

は次によって与えられます。

$$S_n=\sum_{k=1}^{n}k^3=1^3+2^3+3^3+\cdots+(n-1)^3+n^3=\left\{\dfrac{1}{2}n(n+1) \right\}^2.$$

ここで気づいた方もいると思いますが、これは等差数列の和を説明したときに出てきた、自然数の和

$$1+2+3+\cdots+(n-1)+n=\dfrac{1}{2}n(n+1)$$

の$2$乗になっています。

以上の公式をまとめておきましょう。数列の和を求めるのが苦手、という人は公式をきちんと覚えていないことがあるので、まずは公式をしっかり覚えられているか確認するようにしましょう。

◇まとめ◇

1.等差数列の和

初項$a$、公差$d$、末項$l$、項数$n$であるような等差数列の和$S_n$

$$S_n=\dfrac{1}{2}n(a+l)=\dfrac{1}{2}\{2a+(n-1)d\}.$$

2.等比数列の和

$$S_n=\begin{cases}
\ \dfrac{a(1-r^n)}{1-r}=\dfrac{a(r^n-1)}{r-1} &(r\neq 1)\\
\ na &(r=1)
\end{cases}.$$

3.数列の和の公式

$$\sum_{k=1}^n c =nc\quad(cは定数).$$

$$\sum_{k=1}^n k=\dfrac{1}{2}n(n+1).$$

$$\sum_{k=1}^n k^2=\dfrac{1}{6}n(n+1)(2n+1).$$

$$\sum_{k=1}^n k^3=\left\{\dfrac{1}{2}n(n+1)\right\}^2.$$

$$\sum_{k=1}^n r^{k-1}=\dfrac{1-r^n}{1-r}\quad(r\neq 1).$$

3 $\Sigma$の性質(線形性)

ここでは$\Sigma$の持つ性質について説明します。

$2$つの数列$\{a_n\}$と$\{b_n\}$と定数$p$に対して、

$$(a_1+b_1)+(a_2+b_2)+\cdots+(a_n+b_n)=(a_1+a_2+\cdots+a_n)+(b_1+b_2+\cdots+b_n)$$

$$pa_1+pa_2+\cdots+pa_n=p(a_1+a_2+\cdots+a_n)$$

が成立します。
ゆえに、

$$\sum_{k=1}^{n}(a_k+b_k)=\sum_{k=1}^{n}a_k+\sum_{k=1}^{n}b_k$$

$$\sum_{k=1}^{n}pa_k=p\sum_{k=1}^{n}a_k\quad(pはkに無関係な定数)$$

が成立します。

これをより一般に考えると、$p,q$を$k$に無関係な定数とするとき

$$\sum_{k=1}^{n}(pa_k+qb_k)=p\sum_{k=1}^{n}a_k+q\sum_{k=1}^{n}b_k$$

が成立します。特に$p=1,\ q=-1$とすると、次の等式を得ることができます。

$$\sum_{k=1}^{n}(a_k-b_k)=\sum_{k=1}^{n}a_k-\sum_{k=1}^{n}b_k$$

4 $\Sigma$の公式を用いた数列の和の求め方

さて、実際に$\Sigma$の公式を用いて数列の和を求めたいと思います。
ここで注意すべきポイントは

1.$\Sigma$の中は展開する。2.和を求めるときは共通因数をくくりだして計算を楽にする。

の2点です。
特に$\Sigma$の計算の際、分数$\displaystyle \left(\text{例えば} \dfrac{1}{6}, \dfrac{1}{2}\right)$が出てくることが多いですが、それらはくくりだすようにしましょう。

□例2□
\begin{align*}
\sum_{k=1}^{n}(k^2-3k+2)
&=\sum_{k=1}^{n}k^2-3\sum_{k=1}^{n}k+\sum_{k=1}^{n}2\\[5pt]
&=\dfrac{1}{6}n(n+1)(2n+1)-3\cdot\dfrac{1}{2}n([n+1)+2n\\[5pt]
&=\dfrac{1}{6}n\{(n+1)(2n+1)-9(n+1)+12\}\\[5pt]
&=\dfrac{1}{6}n\{2n^2-6n+4\}\\[5pt]
&=\dfrac{1}{3}n(n-1)(n-2)
\end{align*}

□例3□$S=1^2\cdot2+2^\cdot3+3^2\cdot4+\cdots+n^2(n+1)$を求めてみましょう。この$S$は第$k$項が$k^2(k+1)$である数列の、初項から第$n$項までの和であるから
\begin{align*}
S&=\sum_{k=1}^n k^2(k+1)\\[5pt]
&=\sum_{k=1}^{n}(k^3+k^2)\\[5pt]
&=\sum_{k=1}^{n}k^3+\sum_{k=1}^{n}k^2\\[5pt]
&=\left\{\dfrac{1}{2}n(n+1) \right\}^2+\dfrac{1}{6}n(n+1)(2n+1)\\[5pt]
&=\dfrac{1}{4}n^2(n+1)^2+\dfrac{1}{6}n(n+1)(2n+1)\\[5pt]
&=\dfrac{1}{12}n(n+1)\{3n(n+1)+2(2n+1)\}\\[5pt]
&=\dfrac{1}{12}n(n+1)(3n^2+7n+2)\\[5pt]
&=\dfrac{1}{12}n(n+1)(n+2)(3n+1)
\end{align*}
となります。

□例4□$\displaystyle \sum_{k=1}^{n}k(k+2)$を求めます。この場合$k(k+2)$をまず展開します。そうでないと$\Sigma$の公式が使えないからです。ここで、$\Sigma$の公式は足し算引き算定数倍はOKですが掛け算割り算は駄目であることに十分注意が必要です。$k(k+2)=k^2+2k$なので、
\begin{align*}
\sum_{k=1}^{n}k(k+2)
=&\sum_{k=1}^{n}(k^2+2k)\\[5pt]
=&\sum_{k=1}^{n}k^2+2\sum_{k=1}^{n}k\\[5pt]
=&\dfrac{1}{6}n(n+1)(2n+1)+2\cdot\dfrac{1}{2}n(n+1)\\[5pt]
\mbox{ここで$\dfrac{1}{6}n(n+1)$でくくって}
=&\dfrac{1}{6}n(n+1)\{(2n+1)+6\}\\[5pt]
=&\dfrac{1}{6}n(n+1)(2n+7).
\end{align*}
このようにだいたいの場合は$\dfrac{1}{△}n(n+1)$でくくりだす場合が多いです。

□例5□$\displaystyle \sum_{m=1}^{n}\sum_{k=1}^{m}k$のように$\Sigma$が二重にある場合はどうでしょうか。この式は
$$\sum_{m=1}^{n}\sum_{k=1}^{m}k=\sum_{m=1}^{n}\left(\sum_{k=1}^{m}k \right)$$と同値です。よってこれを計算していくと、
\begin{align*}
&\sum_{m=1}^{n}\left(\sum_{k=1}^{m}k \right)\\[5pt]
&=\sum_{m=1}^{n}\left(\dfrac{1}{2}m(m+1)\right)\quad←( )内はmの式になることに注意\\[5pt]
&=\dfrac{1}{2}\sum_{m=1}^{n}(m^2+m)\quad←\Sigma の公式が使えるよう展開\\[5pt]
&=\dfrac{1}{2}\left\{\dfrac{1}{6}n(n+1)(2n+1)+\dfrac{1}{2}n(n+1) \right\}\\[5pt]
&=\dfrac{1}{12}n(n+1)\{(2n+1)+3\}\quad ←共通因数をくくりだします\\[5pt]
&=\dfrac{1}{12}n(n+1)(2n+4)\\[5pt]
&=\dfrac{1}{12}n(n+1)\cdot 2(n+2)\\[5pt]
&=\dfrac{1}{6}n(n+1)(n+2)
\end{align*}
となります。すなわち
$$\sum_{m=1}^{n}\sum_{k=1}^{m}k=\dfrac{1}{6}n(n+1)(n+2)$$
であることがわかりました。面白いことに$\Sigma$が三重になった
$\displaystyle \sum_{j=1}^{n}\sum_{k=1}^{j}\sum_{l=1}^{k}l$は計算すると
$$\sum_{j=1}^{n}\sum_{k=1}^{j}\sum_{l=1}^{k}l=\dfrac{1}{24}n(n+1)(n+2)(n+3)$$
となります。ここでは解説しませんが余力のある人はチャレンジしてみましょう。

シグマ$\Sigma$の計算において、和を求める公式を使う際、式をすべて展開する人がいますが、原則として、このような和は因数分解した形で答えるのが適切なので、しっかり因数分解された形で答えを求めるようにしましょう。

◇まとめ◇

1.はじめに$\Sigma$の中を展開し、$\Sigma$の公式が使えるようにする。

2.$\Sigma$の公式を使う。

3.共通因数と分数をくくりだして因数分解する。この際、必要以上に式を展開しないようにする。

4.原則として、$\Sigma$の公式を用いて求めた数列の和は因数分解した形にして答える。

5 よく問われる数列の和

ここでは大学入試でよく問われる数列の和について解説します。

5-1 部分分数分解

次の和を考えましょう。

$$S=\dfrac{1}{1\cdot2}+\dfrac{1}{2\cdot3}+\dfrac{1}{3\cdot4}+\cdots+\dfrac{1}{n(n+1)}.$$

$\Sigma$の公式を学習したからといって

\begin{align*}
S&=\sum_{k=1}^{n}\dfrac{1}{k(k+1)}\\
&=\sum_{k=1}^{n}\dfrac{1}{k^2+k}\\
&=\dfrac{1}{\displaystyle\sum_{k=1}^{n}(k^2+k)}\\
&=\cdots
\end{align*}
として求めようとする人があまりに多いです。それは間違っています。

先ほども言及したように、$\Sigma$の公式は足し算引き算定数倍は保証していますが、掛け算、ましてや割り算について考えることはできません。つまり、逆数とって計算だ!と思って$\Sigma$の公式を使おうとしてはいけないのです。

となれば、いま$S$を求めるには別の方法をとるしかありません。そこで登場するのが部分分数分解というテクニックです。部分分数分解のアイディアは数学IIIにおける積分の計算で非常に有効なので、数学IIIを入試で用いる人はしっかり勉強しておくとよいでしょう。

この部分分数分解が苦手だ、という人がたまにいますが、メカニズムは至ってシンプルで、「すべての分数を分解する」だけです。いま、$\displaystyle \dfrac{1}{k(k+1)}=\dfrac{1}{k}-\dfrac{1}{k+1}$と分解できるので(→詳細はあとで説明します)、
$$S=\left(\dfrac{1}{1}-\dfrac{1}{2}\right)+\left(\dfrac{1}{2}-\dfrac{1}{3}\right)+\cdots
+\left(\dfrac{1}{n}-\dfrac{1}{n+1}\right)$$
と書くことができます。これを
$$S=\dfrac{1}{1}+\left(-\dfrac{1}{2}+\dfrac{1}{2}\right)+\left(-\dfrac{1}{3}+\dfrac{1}{3}\right)+\cdots
+\left(-\dfrac{1}{n}+\dfrac{1}{n}\right)-\dfrac{1}{n+1}$$
とみれば、$ \dfrac{1}{1}$と$ \dfrac{1}{n+1}$以外の項はすべて消去されて、
$$S=\dfrac{1}{1}-\dfrac{1}{n+1}=\dfrac{n}{n+1}$$
と求めることができます。

■部分分数分解のメカニズム■

部分分数分解を考える問題において、分解するべき分数は多くの場合、

$$\dfrac{△}{(〇k+●)(〇k+■)}$$

の形になっています。注目するべきポイントは分母が$(〇k+●)$と$(〇k+■)$の積になっており、かつ、$(〇k+●)$と$(〇k+■)$の差は一定、すなわち定数になっていることです。$●>■$であるとき、先程の分数は、

$$\dfrac{△}{(〇k+●)(〇k+■)}=\dfrac{△}{●-■}\left(\dfrac{1}{〇k+■}-\dfrac{1}{〇k+●} \right)$$

と分数を分解することができます。余談ですが、部分分数分解は「差分」という概念と密接に関係しています。
興味がある方は調べてみましょう。

□例6□$$S=\dfrac{1}{1\cdot3}+\dfrac{1}{2\cdot4}+\dfrac{1}{3\cdot5}+\cdots+\dfrac{1}{n(n+2)}$$
を考えてみます。ここでは$\dfrac{1}{k(k+2)}$の分解が必要になります。$(k+2)-k=2$を手掛かりに、$\dfrac{1}{k(k+2)}=\dfrac{1}{2}\left(\dfrac{1}{k}-\dfrac{1}{k+2} \right)$と分解します。あとは先程と同様に考えて
\begin{align*}
S=&\dfrac{1}{2}\left(\dfrac{1}{1}-\dfrac{1}{3}\right)+\dfrac{1}{2}\left(\dfrac{1}{2}-\dfrac{1}{4}\right)+\cdots
+\dfrac{1}{2}\left(\dfrac{1}{n}-\dfrac{1}{n+2}\right)
\end{align*}
とできます。ただし、先程と比較して消去される場所が異なります。なぜならば、もう少し式を書き出してみると、
\begin{align*}
S=&\dfrac{1}{2}\left(\dfrac{1}{1}-\dfrac{1}{3}\right)+\dfrac{1}{2}\left(\dfrac{1}{2}-\dfrac{1}{4}\right)+\dfrac{1}{2}\left(\dfrac{1}{3}-\dfrac{1}{5} \right)+\\[5pt]
&\cdots+\dfrac{1}{2}\left(\dfrac{1}{n-2}-\dfrac{1}{n}\right)
+\dfrac{1}{2}\left(\dfrac{1}{n-1}-\dfrac{1}{n+1}\right)\\[5pt]
&+\dfrac{1}{2}\left(\dfrac{1}{n}-\dfrac{1}{n+2}\right)
\end{align*}
よく見れば、先ほどは2つの項が残ったのに対して、今回は4つの項が残ります。このように、消去される場所が異なる場合があるのできちんと毎回どことどこが打ち消されるかのチェックを十分行うようにしましょう。結局、
$$S=\dfrac{1}{2}\left(\dfrac{1}{1}+\dfrac{1}{2}-\dfrac{1}{n+1}-\dfrac{1}{n+2} \right)
=\dfrac{n^2-n-4}{4(n+1)(n+2)}$$
となります。
以上で部分分数分解の勉強は十分なのですが、一部例外的に
$$\dfrac{△}{(〇k+●)(〇k+■)(〇k+▲)}$$
の分解を要求されることがあります。ここで$●>■>▲$であるとします。
これは次のように分解します。
\begin{align*}
&\dfrac{△}{(〇k+●)(〇k+■)(〇k+▲)}\\
&=\dfrac{△}{●-▲}\left(\dfrac{1}{(〇k+■)(〇k+▲)} -\dfrac{1}{(〇k+●)(〇k+■)}\right)
\end{align*}
ただこれでは少しわかりにくいので具体例を考えてみることにします。

□例7□$$S=\dfrac{1}{1\cdot2\cdot3}+\dfrac{1}{2\cdot3\cdot4}+\cdots+\dfrac{1}{n(n+1)(n+2)}$$
いま、$\dfrac{1}{k(k+1)(k+2)}=\dfrac{1}{k(k+1)}-\dfrac{1}{(k+1)(k+2)}$と分解できるので、\begin{align*}
\begin{split}
S&=\left(\dfrac{1}{1\cdot2}-\dfrac{1}{2\cdot3} \right)+\left( \dfrac{1}{2\cdot3} -\dfrac{1}{3\cdot4}\right)\\
&\quad +\cdots+\left( \dfrac{1}{n(n+1)}-\dfrac{1}{(n+1)(n+2)} \right)\\[5pt]
&=\dfrac{1}{1\cdot2}-\dfrac{1}{(n+1)(n+2)}\\[5pt]
&=\dfrac{n^2+3n}{2(n+1)(n+2)}\\[5pt]
&=\dfrac{n(n+3)}{2(n+1)(n+2)}
\end{split}
\end{align*}

となります。

5-2 (等差数列)$\times$(等比数列)

$$S=1+3x+5x^2+\cdots+(2n-1)x^{n-1}$$

を考えてみます。

これは係数部分に注目すると、$1,\ 3,\ 5,\dots,\ 2n-1$と等差数列になっており、また$x$の部分に注目すると$1,\ x,\ x^2,\dots,\ x^{n-1}$となっています。このような数列の和を求める場合は$S$に等比数列の「公比」(この場合は$x$)を掛けた$xS$を$S$から引いた式、$S-xS$を考えるのがポイントです。一般にこのような数列の和を求める場合、$x=1$と$x\neq1$の場合に分けて考えることが必要なので、問題の条件を見落とさないように注意しましょう。では、実際に計算していきます。まずは$x\neq1$の場合を考えます。$S=1+3x+5x^2+\cdots+(2n-3)x^{n-2}+(2n-1)x^{n-1}$より

$$xS=x+3x^2+5x^3+\cdots+(2n-3)x^{n-1}+(2n-1)x^n$$

ここで、最後から2番目の項をしっかり書くことがポイントです。よって$S-xS$を考えれば、
\begin{align*}
S-xS=&1+3x+5x^2+\cdots+(2n-1)x^{n-1}\\[5pt]
&-\{x+3x^2+5x^3+\cdots+(2n-3)x^{n-1}+(2n-1)x^n\}\\[5pt]
=&1+2x+2x^2+\cdots 2x^{n-1}-(2n-1)x^n\\[5pt]
=&1+2(x+x^2+\cdots+x^{n-1})-(2n-1)x^n
\end{align*}
ここで$x+x^2+\cdots+x^{n-1}$は初項$x$、公比$x$、項数$n-1$の等比数列の和なので、等比数列の和の公式より
$$x+x^2+\cdots+x^{n-1}=\dfrac{x(1-x^{n-1})}{1-x}=\dfrac{x-x^n}{1-x}$$
ですから、結局、
\begin{align*}
S-xS&=1+2\cdot\dfrac{x-x^n}{1-x}-(2n-1)x^n\\[5pt]
&=\dfrac{1-x+2(x-x^n)-(2n-1)x^n(1-x)}{1-x}\\[5pt]
&=\dfrac{1+x-(2n+1)x^n+(2n-1)x^{n+1}}{1-x}
\end{align*}
ここで$S-xS=(1-x)S$なので
$$(1-x)S=\dfrac{1+x-(2n+1)x^n+(2n-1)x^{n+1}}{1-x}$$
$x\neq1$より両辺$1-x$で割って
$$S=\dfrac{1+x-(2n+1)x^n+(2n-1)x^{n+1}}{(1-x)^2}$$
と求めることができました。
一方で、$x=1$の場合は$S=1+3+5+\cdots+(2n-1)$であり、これは等差数列の和を表しています。すなわち初項が$1$、公差が$2$、項数$n$の等差数列の和を求めればよいので$x=1$のとき
$$S=\dfrac{1}{2}n\{2\times 1+(n-1)\times 2\}=\dfrac{1}{2}n\times2n=n^2$$
となるので答えは
$$S=
\begin{cases}
\ \dfrac{1+x-(2n+1)x^n+(2n-1)x^{n+1}}{(1-x)^2}&(x\neq 1)\\[5pt]
\quad\quad\quad\quad\quad\quad\quad n^2&(x=1)
\end{cases}
$$
となります。

◇まとめ◇(等差数列)$\times$(等比数列)型の数列の和は、等比数列の公比$r$のとき、$S-rS$を考える。ただし$r=1$かどうかの場合分けは忘れずに。

6 群数列

次に群数列について扱います。

群数列とは数列の項を一定の規則に従ってブロック(=群)に分けてできる数列です。

例えば、自然数の列

$$1,\ 2,\ 3,\ 4,\ 5,\dots,\ n,\dots$$

を次のような群に分けてみます。

$$\underbrace{\{1\}}_{第1群},\ \underbrace{\{2,\ 3\}}_{第2群},\ \underbrace{\{4,\ 5,\ 6\}}_{第3群},\dots$$

このように群を定めた場合に、第$n$群がどのようになっているのか、がよく試験で問われます。
この場合は、第$n$群には$n$個の項があるので、第$n$群の最初の数は、第$n-1$群までにある項数に$1$加えたものに等しいことがわかります(もしよくわからない場合は$n=2$から$n=7$まで実際に書き出して確かめてみましょう)。

そこで第$n$群の最初の数を$a_n$とおくと、
\begin{align*}
a_n
&=\sum_{k=1}^{n-1}k+1\\[5pt]
&=\dfrac{1}{2}(n-1)n+1\\[5pt]
&=\dfrac{1}{2}(n^2-n+2)
\end{align*}
となります。ここで、シグマ$\Sigma$の上は$n$ではなく$n-1$であることに注意しましょう。もちろん、$\Sigma$を使わなくても何とか求めることは可能ですが、$\Sigma$を用いることで解答がすっきり見え、また公式を使うことで計算ミスも減らせるので、このように$\Sigma$が使える場合は積極的に使うようにしましょう。この第$n$群についてもう少し考察してみましょう。第$n$群の最後の数について考えて見ます。まず、群に分ける前の数列は初項が$1$、公差が$1$の等差数列です。第$n$群の最初の数が$a_n$であることと、第$n$群は$n$個の項で構成されているので、第$n$群の最後の数を$b_n$とすると、
\begin{align*}
b_n
&=a_n+(n-1)\times 1\\[5pt]
&=\dfrac{1}{2}(n^2-n+2)+(n-1)\\[5pt]
&=\dfrac{1}{2}\{(n^2-n+2)+2(n-1)\}\\[5pt]
&=\dfrac{1}{2}(n^2+n)\\[5pt]
&=\dfrac{1}{2}n(n+1)
\end{align*}
となります。あるいは、第$n+1$群の最初の数が$a_{n+1}$であることから
\begin{align*}
b_n
&=a_{n+1}-1\\
&=\dfrac{1}{2}\{(n+1)^2-(n+1)+2\}-1\\[5pt]
&=\dfrac{1}{2}(n^2+n+2)-1\\[5pt]
&=\dfrac{1}{2}(n^2+n)\\[5pt]
&=\dfrac{1}{2}n(n+1)
\end{align*}
と求めることも可能です。いずれにしても$b_n$の表し方は一通りです。ではこの群数列で、第$n$群にあるすべての自然数の和はどうなるのでしょうか。第$n$群は初項が$a_n$、末項が$b_n$、項数が$n$の等差数列とみることができるので、第$n$群にあるすべての自然数の和$S_n$は、
\begin{align*}
S_n
&=\dfrac{1}{2}n(a_n+b_n)\\[5pt]
&=\dfrac{1}{2}n\left\{\dfrac{1}{2}(n^2-n+2)+ \dfrac{1}{2}n(n+1)\right\}\\[5pt]
&=\dfrac{1}{4}n(2n^2+2)\\[5pt]
&=\dfrac{1}{2}n(n^2+1)
\end{align*}
となります。このように、群数列は等差数列の和を求める公式を使っていろいろ求めることができるので、群数列が苦手!という人は、群数列には等差数列が隠れている、ということに注意してみましょう。

◇まとめ◇

群数列は等差数列が隠れているので、計算する際は等差数列の和の公式をうまく使うとよい。

7 おすすめの参考書

『数列 (モノグラフ 14)』

数列を完璧にしたいという人はこの本が最適です。その名の通り、数列に特化しています。扱っている問題のレベルは初歩レベルから最難関レベルまで様々です。教科書以上のレベルで難関大を受験したい人はこの本で学ぶと良いでしょう。

 

『荻島の数学II・Bが初歩からしっかり身につく「数列+ベクトル」』

教科書の説明がよくわからず数列が苦手だという人はこの本がぴったりです。扱っている問題のレベルは教科書の例題レベルのものがほとんどです。
問題を解く際に注意すべきポイントや試験で問われやすいポイントが的確に記されています。解説や途中式は丁寧ですが、さらにその式変形に多く説明が書かれているので、まずは教科書レベルの問題が解けるようになりたい人はこの本で勉強するとよいでしょう。

 

『数学B 高速トレーニング数列編』

この本はとにかく教科書の練習問題~章末問題レベルの問題が豊富です。計算ドリルのようにとにかく繰り返し問題を解いて計算力を向上させたい人はこの本がお薦めです。
ただ、レイアウトは少し見にくく、くせがあり、また解説もそれほど丁寧ではありません。一度も数列を勉強したことない人にはおすすめしません。また、この本には群数列についての問題が載っていないので、群数列についての問題を解きたい場合はこの本と同じシリーズの「漸化式・群数列編」を購入する必要があるので注意が必要です。

『理解しやすい数学II+B 新課程版』

この本は問題の種類が豊富です。よってどんなレベルの人でも取り組むことができます。どの参考書を買えばよいか迷った場合はこの本を買うとよいでしょう。基礎がまだできてない、教科書の問題がよくわからない場合は基本問題のみを、そうでない方はすべての問題に取り組むといいでしょう。
この本では問題を解く際にどの部分に着眼すべきか、公式をどのように使えばよいのかの説明が大変詳しいです。量は「チャート式」と同様にかなりあるので、独学ですべて勉強する場合は相当根性が必要になります。ゆえに、授業と並行して授業の補足として問題を取捨選択しながら用いるのがよいでしょう。特に授業の類題を解くといいでしょう。余談ですが、著者の藤田宏さんは世界的に超一流の数学者だった方です。

8 まとめ

数列の和を求める際、ほとんどの場合において$\Sigma$の公式を用います。公式を覚えるのはもちろんですが、それ以上に式をきっちりまとめる計算力が試験では問われます。特に共通テストなどのマークシートの試験ではそれが顕著です。どんなに途中式が合っていても最後の最後に計算を間違えれば0点です。

数学では「わかる」と「できる」は全く別物ですから今回扱った内容はしっかり「わかる」ようにし、何度も繰り返し解きなおすことで「できる」ようになりましょう。

著者情報

究進塾 編集局

究進塾 編集局
東京・池袋にある究進塾の編集局です。受験指導のプロが大学受験に役立つ情報をお届けしています。 大学受験対策コースはこちらからご覧いただけます。
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