ベクトルがわからない理由と正しい勉強法について
今回は、高校数学の中で数ある難所のうちの一つである、ベクトルについて解説していきます。
まず「ベクトル」と聞くと、「矢印なの?数字なの?」という疑問が生まれたり、そもそも図形問題が苦手でベクトルも苦手になってしまったり、原因は様々ですが、まずはベクトルがわからない原因から探っていき、ベクトルを得意に買えるまでの手順を見ていきましょう。
目次
1.ベクトルが難しいと思う理由
ベクトルが「難しい」「わからない」と思われている理由は大きく分けて3つあります。
それぞれの理由を見ていきましょう。
1-1. ベクトルで扱う数字は、今まで扱ってきた数字と意味が違う
ベクトルはほとんどの受験生が数Bの最後で学習する単元です。ベクトルを学習するまでが、数Ⅰ、数A、数Ⅱ、数Bの数列と様々な単元を学習してきたと思いますが、ベクトルは根本的にそれまで扱ってきた数字と意味が違うのです。
ベクトルを学ぶ以前に学習する数字は「スカラー量」といい、向きは気にせずに数字の大きさだけを扱う数量でした。しかしベクトルで扱う数字は、向きと数字の両方を扱う「ベクトル量」というものです。
すなわち、スカラー量では「大きさ」という一つの情報だけを相手してきましたが、ベクトル量では「向き」と「大きさ」の二つの情報を扱うことになるので、理解が難しくなってしまってるのです。
さらに、高校では主に「向き」のことを「矢印」を使って説明をします。
ですので、矢印の足し算や引き算、さらには内積などと言われると感覚的に理解ができず、無意識のうちにベクトルが苦手になってしまうのです。
1-2. そもそも図形問題が苦手である
学習を進めていけばわかりますが、ベクトルの中で平面ベクトルと空間ベクトルの2種類の学習をします。これらの二つには本質的な違いは特にありませんが、慣れるまでは特に空間ベクトルが難しく感じることがあります。
またベクトルが図形に絡めて出題される場合、当然ですが図形の性質を理解していないと解けない問題もあります。
その場合は、まず
・ベクトルの知識が足りなくて解けなかったのか
・図形の知識が足りなくて解けなかったのか
・ベクトルと図形の両方の知識が足りなかったのか
のどれなのかをきちんと見極められるようになることが大切です。
1-3. ベクトルのどの性質を利用して解くべきかが理解できない
ベクトルは、「数」としての性質の他にも、「向き」としての性質も持ちます。それを踏まえて、出題者は「ベクトルには複数の性質があることを理解しているか」を問う問題を出題してきます。
これらの問題は、どのように解けば最も効率よく解くことができるかを見抜く力が大切です。
それはやはり公式を覚えておくだけでは太刀打ちができないので、いち早く公式を覚えた上で、問題演習に取り組みパターンを覚えてしまうべきです。
一度パターンが分かれば、次からはスムーズに解き進めることができます。
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ベクトルのおすすめ勉強法
ベクトルの学習を進める時も、他の分野と同じく、「教科書や参考書でインプット」→「問題集でアウトプット」の流れは同じです。
ただベクトルの場合は覚えるべき公式の数は少なく、また公式は覚えているけど使えない受験生が多いので、問題演習が主にポイントになります。
2-1. まずはインプットから
問題演習が大事だと伝えてきましたが、まずは最低限の知識を頭に入れる必要があります。
ベクトルが何かをまったく理解していない状態で問題演習に取り掛かっても、なにを聞かれているのかさえわからないでしょう。
ベクトルで必要となる公式は、始点変換のようなとても簡単なものを入れても20個程度です。
数学の他の分野に比べても圧倒的に覚えておくべき公式の数は少ないので、とりあえず頭に入れてしまいましょう。
基本的に使うのは教科書で構いませんが、教科書はどうしても堅く、どこが重要なのかが一目でわかりにくいという問題もあります。教科書がなかな肌に合わず、使いづらいという方は、以下の参考書を使ってみてください。
教科書のように堅くなく、ベクトルの基本がほとんど分かっていない人が読んでも理解ができるように、工夫がされています。基本的に話し口調で書き進められているので、ストレスなく読み進めることができます。
この1冊で、ベクトルの基本はすべてマスターできますし、また一目でどこが重要なのかもわかるようになっているので、ボリュームの割に時間をかけずに復習をすることもできます。
教科書が肌に合わなかった人は、ぜひこちらの参考書に取り組んでみてください。
2-2. 問題演習に取り組む
一通り必要な知識をインプットしたら、早速問題演習に取り掛かっていきましょう。
しかし最初から難しい問題やベクトルの典型問題に取り組んでもほとんどできませんので、手順を踏んでから難しい問題に取り組んでいくようにしましょう。
また、問題演習をする際に大切なのは、解説をしっかり読み込むことです。
解答を見て合ってるか間違っているかをチェックするだけではなく、間違った問題は必ず解説を読み込み、自分の手で模範解答をスラスラ書けるようになるくらいまで復習をすることが理想です。
解説を読み込んでも理解できない場合は、教科書や参考書まで戻って復習をするようにしましょう。せっかく見つかった弱点を放置するのはあまりにももったいないですし、今できるようにしておかないと入試本番まで克服するチャンスが来ないかもしれないからです。
問題演習で取り組む順番は、
・教科書汎用問題集
・網羅型問題集
・実戦問題集
です。
まずは学校で配布されている、4STEPやクリアーなどの汎用問題集で力をつけていくのがおすすめです。
わからない問題は解説を読み込み、何を見なくても模範解答を白紙に再現できるくらい練習しましょう。この段階は基本中の基本なので、できないと後々困ることになります。
1周ではなく2周、3周と取り組み、手を抜かずに取り組みましょう。
続いては、網羅型の問題集に取り組んでいきます。
網羅系の問題集としては、みなさんご存知の青チャートや黄チャート、FOCUSGOLDなどが有名です。
若干の難易度の違いはありますが、中堅大学志望であれば黄チャート、難関大学志望であれば青チャートかFOCUSGOLDを選んでおけば間違いありません。
網羅系問題集に取り組むことで、典型的な問題の解法パターンを一通り身につけることができます。ベクトルでは典型問題がよく出題されるので、網羅系参考書に取り組んでおく効果は大きいです。
チャート式に取り組むにしても、FOCUSGOLDに取り組むにしても、まずは例題の下の解説に一通り目を通してから同じページに載っている練習問題に取り組みます。
スラスラ解けなかった場合は例題の下の解説を見直し、白紙に書き写すという行為をしてみてください。
解けなかった問題に印をつけ、印のある問題だけ2周、3周と取り組み、白紙に解答を書く力を養うと、それだけである程度のレベルの大学入試に対応できる力がつきます。
最後に、実戦レベルの問題集に取り組み、難関大学入試に対応できる力を身につけていきます。
多くの受験生はすでに気づいていると思いますが、教科書で学習するレベルと実際に出題される入試レベルには大きな差があります。
「わかる」から「できる」にしていくのが最後の実戦レベルの問題集に取り組むパートであり、応用的な問題に取り組んでいきます。
このレベルに到達している段階では、基本的な内容や典型問題の解法はすでに身についているはずなので、どういう経緯でその発想に至ったのかや計算を正しくやりきれるかを重点的に意識して問題演習に取りかかりましょう。
このレベルの問題集を1冊やり終えたら、ベクトル分野に関しては志望校の過去問演習に取り組んで大丈夫なレベルまで到達します。
この段階のおすすめの問題集を紹介しておきます。
まず最初に、河合出版から出されているプラチカシリーズを紹介します。
数学のプラチカシリーズは”文系用”、”理系ⅠAⅡB用”、”理系Ⅲ用”の3つ種類がありますが、今回扱うベクトルは数Bに該当するので、文系受験生は文系用、理系受験生は理系ⅠAⅡB用で考えてもらったら構いません。
プラチカは入試問題集の中でも最高難度の問題を扱うものでありながら、問題文の5倍以上の長さで解説をするなど、「わからないところが出てしまっては困る」という受験生想いの一面が見える問題集です。
とても丁寧に解説されているので、解説を読んでもわからないという心配はないでしょう。
これをマスターすればベクトルの問題でわからないというものはほぼなくなると思うので、1周で終わらずに2周3周と繰り返し取り組み、完璧に近づけてください。
2-2-2. 1対1対応の演習 数学B
こちらの問題集は、学校の授業では習うことのないような発想力がつく問題集です。
編集をしているのが「大学への数学」というところで、特にこの「1対1対応シリーズ」は難易度が高いことでも有名です。
それぞれの問題はは骨が折れる問題が並んでいますが、問題集としてはボリュームが少なく、問題数も少ないので取り組みやすいです。
解説も丁寧なので、理解できないことはまずないでしょう。
3.まとめ
今回は、ベクトルがなかなかわからず理解できない受験生向けに、その原因とそれを踏まえた勉強法を紹介してきました。
初めはこれまで扱っていたスカラー量との違いに戸惑うかもしれませんが、インプットをして問題演習を繰り返していくとベクトル量の性質が理解できてきますので、他の分野よりもさらに問題演習を多めに行うことを意識してください。