絶対に知っておきたい高校化学の勉強法のすべて
大学受験の化学で苦労している人は多いと思います。
ただ、化学の勉強はポイントさえ抑えれば必ず上がります。
ここでは東大生およびプロ講師に徹底的にヒアリングして、化学の学力を上げるための勉強法のすべてがつまっています。
ここに書いてあることを実践すれば、きっと化学の成績は上がっていることでしょう。
1.高校化学の進め方
化学は理論化学、無機化学、有機化学に分類されます。これが化学をとっつきにくくさせる要因です。まずは全分野に共通する勉強法をお伝えした後、各分野ごとの学習のポイントを書いて行きます。
1-1.全分野に共通する勉強法
これは理科、社会の知識系科目全体に言えることですが、教科書や参考書を読んだだけではなかなか頭に入りません。そこでおすすめなのが、参考書の内容をノートにまとめて行く作業です。
大変そう!無理ー!
という声が聞こえてきそうですね。
たしかに、遠回りで面倒に思えますが、結果的には頭に残りやすいです。
読書自体についても言えることですが、読む作業というのは意外と頭に残らないんですね。
「カラーマーカーを引いて行けばいいじゃないか!」という人もいますが、それでも多少マシになる程度です。
「重要なポイントをまとめて行く」となると、「どこが大切なんだろう?」と探す必要が出てくるので、まず読むときの集中力が違います。さらに、探し出してノートに書いた部分は頭に残りやすくなります。
ちなみに、学校の授業で基本事項を説明してくれて、板書を写したノートを持っている。そして、すでに基本知識はある程度頭に入っていて、実戦問題を解きたいという方はこの作業を飛ばしても構いません(私が指導してきた経験から言うと、これは少数派だと思いますが・・・)。
また、まとめノートを作るのがどうしても難しい方は、次の二つの方法があります。
①【2-1-2. 上記の勉強法で挫折してしまった方は・・・】で紹介する書き込みノート式教材をやってみる。
②スタディサプリを視聴しながら、板書をノートに写して行く。
それぞれ効果がある方法ですが、私の指導経験上、自分でまとめノートを作った方が圧倒的に効果は大きいです!
書き込みノートだと、どうしても空欄だけに目が行きがちで、全体像が見えないまま進んで行きがちなんですね。
自分で参考書または教科書を読んでまとめるとなると、全体を読んでから重要なところをまとめる必要が出てくるので、全体と部分の両方に意識が行きます。これが大事なんです。
これは理論化学でも、無機化学、有機化学でも一緒です。
蛇足ですが、ノートにまとめる技術が身につくと、他の科目の勉強でも役に立ちますよ。最初はうまく行かなくていいんです。だんだん慣れていきますから。
はっきり言ってしまえば、私が高校化学の勉強で一番大切だと思うことはこの方法です。
1-2.理論化学
以下の3つのステップで進めて行くイメージを持つとよいでしょう。
- 最初は知識中心の単元(物質の分類、原子、イオン、結合、周期表)でしっかり知識を固める。キーワードが沢山登場するので、意味を言えるようにしておきましょう。
- 物質量計算・濃度計算・化学反応式の量計算という計算問題の「三種の神器」を身に着けます。特に、物質量(mol)はイメージがわきにくく大変ですが、これも演習問題を積めば慣れるので、頑張って演習しましょう。
その際に、気をつけることは、「式の途中に単位を必ず書く」ことです。 - ここまで終わったら、いよいよ本格的に理論化学の森に入って行きます。
熱化学、酸塩基、酸化還元・電池・電気分解、気体、溶液、平衡とそれぞれ方向性が異なる単元が登場します。
ここでもb.と同じく「単位を書く」ということを意識してください。
熱化学、気体については物理と重なる部分がありますので、物理をやっていると強い分野です。
1-3.無機化学
暗記中心で「脈絡がなく覚えにくく忘れやすい」と言われている無機化学ですが、以下4点に気をつけると覚えやすくなります。
- 身近なものとの結びつきを意識する。
図説を見れば、「塩酸はトイレ洗剤に使われている」「山頂だと低い温度で沸騰するのは蒸気圧が低いせい」といった情報が載っています。こういった身近なものと結び付けると記憶に残りやすくなるはずです。
- 図説で色や形を見るようにする
図説には写真がいっぱい載っています。色や形を見ることで頭に焼き付けましょう。
- ゴロを覚える
イオン、沈殿の色や、沈殿するイオンの組み合わせなどは、覚えにくいところです。ここはゴロの力も借りることで乗り切りましょう。
- 反応式の仕組みを理解する。
無機化学で登場する反応式の主なものは、酸・塩基の式と酸化還元反応式です。このうち、酸化還元反応式は理論化学でもよく登場するので慣れやすいですが、酸塩基の式の、特に「弱酸(弱塩基)遊離反応」はやっかいです。
ただ、無機化学の大事な反応式はこの仕組みのものが多いので、この仕組みをしっかり理解することで、無機化学の反応式はだいぶ覚えやすくなるでしょう。
1-4.有機化学
有機化学は、最初はとっつきにくいですが、基本ルールさえ覚えればあとはそれをパズルのように組み合わせて覚えていける単元です。以下のステップで学んで行きましょう。
1.最初に基本ルールを覚える。
官能基、命名法を覚える
2.脂肪族化合物の反応を、仕組みも含めて覚える
後半の芳香族化合物の方がやっかいに見えますが、実は脂肪族化合物の反応をしっかり覚えておけば芳香族化合物の反応はだいぶ楽になります。特に「エステル化」の仕組みはすごく大切です。エステルの構造決定は有機化学の最頻出問題ですし、油脂、芳香族化合物でも「エステル化」はよく登場し、重要です。
3.芳香族化合物の反応は「ベンゼン→フェノール」を優先に
まず「ベンゼン→フェノール の4つの方法」を意識して覚えましょう。その他にも色々ありますが、これが芳香族化合物の『軸』の部分で、特に大事です。それから「ベンゼン→アニリン」の方法を覚えましょう。
4.油脂は「エステル化」と結び付けて覚えよう
油脂は苦手な方が多い単元ですが、実は「エステル化」の仕組みをしっかり理解し、グリセリンの構造式を覚えておけば難しくありません。
5.糖類、タンパク質
糖類は、グルコースの構造式はα-, β-とも書けるようにしましょう。逆に言えばこれさえしっかり覚えておけば、後はグルコースとの比較や組み合わせで覚えて行けます。
タンパク質については、アミノ酸の平衡のルールを理解した上で書けるようにしておきましょう。中性アミノ酸が基本ですが、国公立大学や医学部、早慶などを目指す人は酸性アミノ酸、塩基性アミノ酸についても書けるようにしておくとよいでしょう。
6.合成高分子化合物
合成高分子は覚えることが多く、大変です。ただ、熱可塑性樹脂がメインですし、これは命名法のルールを意識すれば覚えて行きやすいはずです。
また特に覚えにくくよく出るものとしては「ビニロンの製法」があります。これはくり返し反応式を書けるかチェックするようにしましょう。
7.生命と物質
化学で登場する生命の知識はそれほど多くありません。「核酸」「ATP」「リン脂質」について基本事項を覚えておけば問題ないでしょう。
ここまでで、かなり大変そうな科目という印象を持った方も多いでしょう。でも、正しいやり方で勉強して行けば、得意科目にしやすい科目でもあります。
2. レベル別勉強法
次に、レベルごとに勉強法を紹介して行きます。ちなみに以下で書いてある偏差値というのは河合塾記述模試での偏差値を目安にしています。(あくまで目安です。悪しからず)
2-1.化学嫌いの人が偏差値50まで持っていくための勉強法
まずは化学嫌いを克服して、偏差値50まで持っていきましょう。
化学への苦手意識が出やすい原因は主に2点あります。
- 範囲が膨大
- 分からない知識がつぎつぎと出てきて分かりにくい。
そこで、化学嫌いの方にはとにかく読みやすく、かつ、重要なポイント中心に絞られている教材がよいでしょう。
-参考書&問題集-
<ポイント>
かみくだいた表現で読みやすく、また重要なポイントに絞ってあるため、さらっと1周読み終えることができる点、まとめノートも作りやすい点、さらに別冊の問題集もついている点が特長です。
<使い方>
1章を読み終えるたびに、別冊の問題集を解いていきましょう。
-図説-
化学の学習には図説は超大切です。化学は覚えることが多く、それらを文字情報がメインの参考書だけで覚えるのは大変です。図説は写真や図が中心なので、印象に残りやすいですし、グラフや実験操作なども詳しく載っているので日頃から目に触れて行くことで、いざ入試問題レベルになったときに大きな効果を発揮することでしょう。以下のものがお薦めです。
- 視覚でとらえるフォトサイエンス化学(数研出版)
<ポイント>
レイアウトデザインや写真がきれいで読みやすいです。
<使い方>
参考書を1単元読むごとに図説でも同じ単元を見て、イメージを頭に焼きつけて行きましょう。
以上です。ちなみに、この初期段階をこなすための期間は2~3か月が理想です。ただ、実際にこの期間で終えるためには、毎日2~3時間は取り組む必要があるでしょう。
2-1-2. 上記の勉強法で挫折してしまった方は・・・
上記のやり方が最もオーソドックスな勉強法です。ただ、やはり個人の好みや相性もあります。もし上記の教材が合わない場合は、以下のような教材をやるという手もあります。
書き込みノート式教材
どの科目にも共通して言えることですが、書き込みノートは初学者にとってハードルが低く取り組みやすい教材です。空欄を埋めて行くことで自然と知識を身に着けられます。次のどちらかがよいでしょう。
- 基礎からのジャンプアップノート 理論化学 計算&暗記ドリル
- 基礎からのジャンプアップノート 無機・有機化学 暗記ドリル
2冊あるのが若干大変そうに見えるところですが、レイアウトが見やすく、また、モルをダースと比較するなど、化学アレルギーを払しょくするための工夫がされています。化学の初心者、苦手意識の強い方には特におすすめできるドリルです。
- 化学の必修整理ノート 新課程版(要点を書き込むだけで覚える)
おおまかに1周するにはよい教材です。
基本演習用問題集
- 「リードLightノート化学基礎」「リードLightノート化学」
<ポイント>
問題の豊富さが特長です。
知識問題については「書き込みノート式教材」の形式の穴埋め問題からはじまり、徐々に実戦的な問題までステップアップして行けます。また、計算問題については、類似した基本問題が多数載っているので、反復演習にはもってこいです。
参考書(流れをつかむためのもの)
- NEW斉藤化学I・II講義の実況中継―高校化学 ①~④
語り口調で構成されているところが特徴的です。そして意外と細かいところまで説明してくれています。読みやすいというのが長所でもあり、短所でもあります。
というのは、読んだだけでは頭に入らないという方もいるので、そういった方には向いていないかもしれません。
2-2.偏差値50前後の人が60まで持って行くための勉強法
苦手意識を脱したら、次はもう1歩上のレベルを目指しましょう。
共通テストで70~80%、MARCH、農大、歯学部を目指す方は以下の教材・勉強法がお薦めです。目安の期間は、1~2か月です。
-参考書-
理論化学
- 大学受験Doシリーズ 鎌田の理論化学の講義 改訂版
<ポイント>
理論化学の計算問題を解く際に重要な考え方を分かりやすく説明してくれます。また、例題の選定もよく、解説を読みながら復習すれば1問から得られる部分が大きいでしょう。
<使い方>
まずは一生懸命読んで行きましょう。重要な式については読んだ後、覚えているか、紙にテストしながら進めて行くとよいでしょう。また、例題、章末問題は解きましょう。
無機化学
- 大学受験Doシリーズ 福間の無機化学の講義 四訂版
<ポイント>
無機化学の参考書はほとんどが暗記に偏っている中で、理論化学との関連性を重視して、理論的な説明をしてくれている数少ない教材です。丸暗記を脱することで無機化学が一気に得意になる方が生まれる一冊です。
<使い方>
まずは一生懸命読んで行きましょう。
特に前半部分が大切です。電子式、酸化物、オキソ酸の構造式は書けるようにしておいてください。
「頭に入って行かない」という方は、多少時間はかかりますが、ノートにまとめていくのがおすすめです。
また、反応式の作り方も理解した上で、作れるようにしておきましょう。
有機化学
- 大学受験Doシリーズ 鎌田の有機化学の講義 四訂版
<ポイント>
多くの参考書が有機反応の仕組みを割愛している中、反応の仕組みについて解説してくれている数少ない教材です。
しかも、詳細過ぎると挫折しがちなところを絶妙なさじ加減で選定し、分かりやすく解説しています。
丸暗記を脱することで有機化学が一気に得意になる方が多い一冊です。
<使い方>
「仕組みを理解する」ことを重視して読んで行きましょう。
また、例題は必要不可欠な問題なので解いて行きましょう。
章末問題はややレベルが上がりますが、質の高い問題が多いので、基本問題集を終えた後であれば解いた方がよいでしょう。
-問題集-
- 大学入学共通テスト・理系大学受験 化学の新標準演習 改訂版
<ポイント>
- 基本~標準問題がつまっています。
- 解説が詳しいのが大きな特長です。
- 学校準拠問題集(セミナー、リードαなど)とほぼ同等のレベル、分量の問題集です。
<使い方>
解説にはチェックペンをひきながら読んで行きましょう。
- セミナー化学基礎+化学
<ポイント>
- 多くの学校で配布される準拠問題集です。
- 易しい問題から難関大学入試問題まで幅広いレベルの問題が載っています。
<使い方>
「基本例題3周→応用問題3周」という順番で進めるとよいでしょう。
※このときには図説は必ず開くようにして、見ておくと、イメージが頭に残るので覚えやすくなります。
という流れで進めます。ここまでで基本レベルは完成します。この段階を1~2か月でこなしたいところです。
共通テストのみで化学を使う方は共通テスト型の問題集(共通テスト 化学の点数が面白いほどとれる本、短期攻略共通テスト化学など)に、また、MARCH、農大、歯学部であればそのまま過去問に行っても合格点が狙えるレベルです。
<注意点>
学校で配布されている場合は別冊の解答解説も合わせてもらっているはずなので、これを使うとよいのですが、個人では解答解説は購入できないので、新たに購入する場合は、類似の「エクセル化学基礎・化学」の方がよいでしょう。
- 新訂エクセル化学総合版―化学基礎+化学
<ポイント>
学校準拠問題集の中で、市販もされている貴重な問題集です。
さらなる上を目指す方は次のステップに進みましょう。
2-3. 偏差値60前後の人が65まで持って行くための勉強法
共通テスト90%、記述模試偏差値65まで持って行くための勉強法です。
国公立大学(旧帝大、東工大以外)、早慶理科大、私大医学部(慶應・慈恵・日医を除く)、上位私大薬学部を目指す方はこの勉強法がよいでしょう。
ここからは大学の過去問、しかもひとひねりした問題が多く入っている問題集です。目安の期間は、2か月以内です。
問題集
以下のどちらかがおすすめです。解説の分かりやすさで決めればよいでしょう。本屋さんで試しに一問、解説を読み比べてみましょう。
- 実戦化学重要問題集 化学基礎・化学
<ポイント>
多くの受験生が使う定番問題集です。入試基礎問題レベルのA問題と、難関大学入試に出るようなB問題から構成されています。「解説がやや分かりにくい」という声もありますので、実際に読んでみることをおすすめします。
<使い方>
・A問題3周→B問題3周の順で解きましょう。
・間違えた問題が知識系であれば「化学の新研究」で調べて、該当箇所にマークをしておくとよいでしょう。<
<ポイント>
重要問題集と近い構成になっていますが、確認問題→必須問題→レベルアップ問題と3段階になっている点が違いです。分量的に重要問題集と両方に手を付けることは難しいはずなので、解説を読んで自分がしっくりくる方を選ぶとよいでしょう。
<使い方>
・重要問題集と同様に確認問題3周→必須問題3周→レベルアップ問題3周の順で解きましょう。
・間違えた問題が知識系であれば「化学の新研究」で調べて、該当箇所にマークをしておくとよいでしょう。
国公立大学(旧帝大、東工大以外)、早慶理科大、私大医学部(慶應・慈恵・日医を除く)、上位私大薬学部志望の方はこれ終わったら過去問に行っても大丈夫でしょう。
もう1冊取り組んでさらに強化したい場合は以下の教材がお薦めです。
2-4. 偏差値65前後の人が70まで持って行くための勉強法
旧帝大、東工大、医学部(国公立単科医科大系、慶應・慈恵・日医)などの化学に難問が出やすい大学を目指す方は、さらにハイレベルな問題演習を積むとよいでしょう。
以下の中から「解説が分かりやすいそうな」問題集を選んでください。問題集選びは問題数は評判よりも、解説が分かりやすい、理解しやすいという点が最も重要です。
- 化学 標準問題精講
<ポイント>
問題数が106問と、比較的少なめで、時間がない人が短期間で1周したいときにおすすめの一冊です。
- 大学入試 全レベル問題集 化学 4 私大上位・国公立大上位レベル 新装版
厳選された55題(理論化学33題・無機化学4題・有機化学18題)なので、標準問題精講に比べてもコンパクトです。
- 医学部の化学[化学基礎・化学]
<ポイント>
・問題数が多いので、演習量を積むという意味でもとてもよい問題集です。
・私大医学部向けの問題から、国公立医学部の問題まで幅広く網羅されています。
2-5. 弱点分野を補強するための勉強法
模試を受けると、自分の弱点分野が見つかるはずです。
同じくらいの得点の人と比べて特に失点している単元です。これを補強しましょう。やるべきことは分野ごとに違いますので以下に詳しく説明して行きます。
- 理論化学(計算問題が解けない)
→「化学計算の考え方解き方 (シグマベスト) 」で該当する単元の問題を探し、3周解きましょう。
- 理論化学(知識問題が解けない)
→「Doシリーズ鎌田の理論化学の講義」で該当単元の知識をノートにまとめる
記憶にしっかり定着します。もしまとめノートがどうしても苦手な方は書き込み式ノート(「必修サブノート」または「化学の必修整理ノート」)を使うとよいでしょう。
- 無機化学
→「Doシリーズ福間の無機化学の講義」で該当単元の知識をノートにまとめると記憶にしっかり定着します。
もし、まとめノートがどうしても苦手な方は書き込み式ノート(「必修サブノート」または「化学の必修整理ノート」)を使うとよいでしょう。
- 有機化学(基礎知識が抜けている)
→「Doシリーズ鎌田の有機化学の講義」で該当単元の知識をノートにまとめると記憶にしっかり定着します。
もし、まとめノートがどうしても苦手な方は書き込み式ノート(「必修サブノート」または「化学の必修整理ノート」)を使うとよいでしょう。
- 有機化学(構造決定に不慣れ)
有機化学の構造決定は演習量がモノを言います。
→「有機化学演習」の例題だけをやって行くのがよいでしょう。
3. 問題集の進め方
問題集を解くときになんとなくで解いていませんか?解き方を工夫することで効果は大きく変わります。以下の解き方を参考にしてみてください。
- 一周目
- まず白紙に解いてみる
- 分からない場合は5分考える
- それでも出ない場合は問題番号に×をつけて、解説に下線を引きながら読んで行く。
- 解答解説を隠して、解答を再現できるか試してみる。できない場合は解答解説をそのまま写しましょう。(すぐにやれば解けるが、時間が経つと忘れてしまうという場合は、その日の化学の勉強時間の最後にまとめてやっても大丈夫です)
- 週に1回、その週に解いて×がついている問題の解き直しを行う。復習する曜日はあらかじめきめておきましょう。
- 二周目
- ×のついた問題を解く
- 間違えた場合は問題番号の×の隣に、もう1個×をつける。
- 解説に下線を引きながら読んで行く。
- 解答解説を隠して、解答を再現できるか試してみる。できない場合は解答解説をそのまま写しましょう。(すぐにやれば解けるが、時間が経つと忘れてしまう心配が高い場合は、その日の化学の勉強時間の最後にまとめてやっても大丈夫です)
- 週に1回、その週に解いて×がついている問題の解き直しを行う。
- 三周目
××の問題を解いていく
要領は一、二周目と同様です。
ここで、3つめの×がついた問題は、「苦手な問題」としてしっかり意識しておく必要があります。
それでは、どう克服するか?ですが、正直言ってしまうと「苦手な問題」は解法がしっくり来ていないということなので、誰か聞ける人がいればその人に説明してもらうのが一番だと思います。
ただ、ここでは独学でも克服する方法を提案したいので、もし聞く人がいない場合は以下の方法で克服しましょう。
- まず、その単元の基本知識が抜けている可能性があるので、参考書で該当単元の基本的な考えを読み込む。
- 次に解答解説を読み込む。
- 「苦手問題用ノート」を作り、今読んだ解答解説をに再現する。再現できなければ、その再現できなかったところを赤字で書いておく。(赤字の箇所は、特に頭に思い浮かばないところ)
- 「苦手問題用ノート」を週に1回必ず見直す。赤い透明シートで隠し、赤字のところを再現できるかテストしてみる。
苦手なポイントをできるだけ具体的に見つけて、しっかり記録し、それと定期的に向き合うようにすることが飛躍への道です。
4. 目的別勉強法
これまではレベル別の勉強法を紹介してきましたが、ここからは入試を見据えて目的別の勉強法を紹介します。
4-1.共通テスト勉強法
まずは基礎力をつける必要があります。
この方法については、「2-1.化学嫌いの人が偏差値50まで持っていくための勉強法」「2-2.偏差値50前後の人が60まで持って行くための勉強法」を参照してください。
これに基づいて、①基礎知識の記憶定着 ➁計算問題の演習 を徹底的に行いましょう。
共通テスト対策をスタートする時期についてですが、11月後半からで十分でしょう。マーク模試で平均80点以上を取っている方は12月からでも大丈夫です。
化学は共通テスト特有の問題が少なく、また、数学、生物などの他科目に比べて、共通テスト独特のハードルは見当たりません。
そこで、記述模試で点数を取れるよう実力を鍛えておけば、11月後半からスタートしても十分通用します。
逆に言えば、共通テスト型問題集で実力を上げていくということは期待しないでください。
抜けていた知識の穴埋めをする程度であれば問題ありませんが、計算問題のパターンが抜けている場合は「2-1.化学嫌いの人が偏差値50まで持っていくための勉強法」に戻ってください。
理系の方で共通テスト化学の詳細な勉強方法を知りたい方は【理系向け】共通テスト化学で高得点を取るための勉強法(目標点別)も参考にしていただくと良いでしょう。
4-2.東大対策勉強法
東大の化学の特徴は、一見すると単元が分かりにくく、どこから手をつければよいか戸惑う問題が多いです。
ただ、実は基礎的な知識を聞いていることが多いので、基礎的な知識がしっかり身についていればそれほど難しくはありません。
また、そんなに難しい計算式が出てくるわけでもありません。なので「2. レベル別勉強法」に従って、受験化学力を着実に上げていきましょう。
「2-4. 偏差値65前後の人が70まで持って行くための勉強法」をしっかりクリアした上で、東大特有の化学に慣れるべく、過去問の演習に入って行きましょう。
【スケジュール例】
~11月まで:市販問題集中心(2次試験対策)
12月~共通テスト:共通テスト対策中心
共通テスト後:過去問
【教材】
鉄緑会東大化学問題集 資料・問題篇/解答篇
<ポイント>
10年分の過去問が収録されていて、解説も詳しいので、東大の化学問題に慣れるには十分でしょう。
4-3.国公立医学部対策勉強法
国公立大学医学部は、大学によって問題のレベルに差があります。
旧帝大や単科医科大学については問題の難易度が高いので、「2-4. 偏差値65前後の人が70まで持って行くための勉強法」の勉強法を行う必要があります。
それ以外の大学については、標準レベルの問題を高得点取るタイプの問題が多いので、「2-3. 偏差値60前後の人が65まで持って行くための勉強法」までマスターすれば、あとは過去問に行ってもよいでしょう。
ともかく、基本段階の「2-2.偏差値50前後の人が60まで持って行くための勉強法」が終わったら、一度志望校のレベルを実感するため、過去問を解いてみましょう。
【スケジュール例】
11月まで:市販問題集中心(2次試験対策)
12月~共通テスト:共通テスト対策中心
共通テスト後:過去問演習
その上で、医学部の過去問を単元別に整理した問題集には以下のものがあります。余裕がある方はチャレンジするとより安定感が増すこと間違いなしです。
【教材】
医学部の化学[化学基礎・化学]
<ポイント>
・私大医学部向けの問題から、国公立医学部の問題まで幅広く網羅されています。
・問題数が多いので、新演習と両方をこなすのは難しいかもしれません。医学部受験者は、新演習の代わりにこちらに取り組むという選択をしてもよいでしょう。
お医者さんになろう医学部への化学
<ポイント>
ちょっと古いですが、一筋縄では行かない名問ばかりで解きごたえがあります。医学部に限らず旧帝大志望の方にもとてもよい本です。
4-4.私大医学部対策勉強法
私大医学部は大学によって問題タイプがかなり異なりますし、クセがあります。
慣れるために過去問演習が必要です。私大医学部受験者は複数の大学を併願することが一般的なので、過去問演習はどんなに遅くとも11月あたりからスタートした方がよいでしょう。
- 慈恵、日医、昭和・・・国公立の問題に近く、比較的オーソドックス
- 慶應、順天堂・・・クセがかなり強く、慣れが必要
- 藤田・・・有機化学に難問が紛れている
- それ以外・・・マーク式で時間が厳しく、高い正答率が求められる。正誤問題の頻度も高い。
【スケジュール例】※私大医学部専願の場合
10月まで:市販問題集中心
11月~入試直前期:過去問演習→間違えた問題について、下記の教材で演習し、弱点を補強する。
次の問題集は、医学部の過去問を、単元別に整理した問題集です。できるだけ10月までに終わらせておくべきでしょう。
【教材】
-上位私大向け
医学部の化学[化学基礎・化学]
<ポイント>
・A問題=基本問題、B問題=発展問題なので、A問題を2周→B問題を2周という順番で進めましょう。
-中堅~下位私大向け
【教材】
化学標準問題集 (医学部攻略シリーズ)
主に私大医学部の過去問を集めた問題集なので、うまく使えば効果があります。もっとも、かなりマニアックな問題も入っているので、少なくとも重要問題集(または良問問題集)まで終えてから手を付けたほうがよい問題集です。
医学部の化学[化学基礎・化学]
<ポイント>
・A問題は中堅~下位私大でも正解しなければならない問題で構成されているので、A問題を何周もして、短時間に、正答できるように演習しましょう。一方、B問題は、「何とか私大医学部どこかに合格できればOK」という方は飛ばしてもよいでしょう。
5 . 化学の勉強の助けになるもの
5-1.「化学の新研究」の活用
困ったときの辞書代わりとして「化学の新研究」(三省堂)を手元に置くようにして、他の参考書で解決できないことは調べ、アンダーラインを引いておくとよいでしょう。高校化学で一番詳しい参考書です。これをメインにしてやろうとすると、パンクしてしまうほどの情報量ですが、部分的に拾って読んで行けば、きっと大きな力になるでしょう。特に医学部や旧帝大、東工大、早慶など、偏差値65以上の大学を目指す方、もしくは化学を得点源にした方は持っておいた方がよい一冊です。
5-2.画像や映像の活用
化学に興味を持つきっかけは、反応の激しい炎だったり、物質のきれいな色だったりとヴィジュアル的な刺激が大きいです。なので、図説やネット検索、有機化学は模型などを組み立ててみるなどして、ヴィジュアル面で脳を刺激しながら覚えて行くとよいでしょう。
特に、動画の力を借りる場合は以下の方法があります。
多くの受験生が活用している動画授業配信サイトです。授業のクオリティも高く、費用面でも月額2,178円(2022年12月時点)とお得です。
- NHK高校講座
オンラインでバックナンバーが無料で見れます。さすがはNHK、クオリティの高い映像を無料で見れるのは嬉しいですね。
- WEB玉塾
無料で見やすいアニメ形式なので、最初にさらっと流れをつかむにはよいかもしれません。
- YouTube動画
その他YouTubeには無料の動画が山ほどアップされています。
「高校化学 酸塩基」などで調べると、沢山出て来るので、視聴回数が多めのものから見て行くと、好みの授業画に出会えるかもしれません。
6.化学計算で気を付けるべきこと
多くの大学において、化学の入試問題では、計算問題の割合が高く、難関校になればなるほどその割合は高くなります。
また、この計算問題はできる人とそうでない人で大きな差がつきます。
そこで、計算問題を演習する際に気をつける点をまとめておきます。
計算ミス、桁間違いが発生しやすい「気体」分野を例にとって、計算の工夫について、少しお話しして行きましょう。
(例題)
温度17℃、圧力1.0×105(Pa)、の元で体積3.0(l)の気体が存在する。この気体の物質量は何molか。有効数字2桁で答えよ。
(解き方)
化学の計算ミスで多いのが「桁間違い」です。
2.0×10-2 が正解なのに、2.0×10-3 と書いてしまったり、というミスは多いですね。
化学の計算問題では「桁」はとても大事なので(例えば薬品などで、桁を間違えてしまったら大変ですよね・・・)、桁間違いは×にされてしまいます。
そこで桁間違いをなくす工夫の一つとして①→➁で 8.3×273=8.3×2.73×102 としています。
このように直しておけば、そこから 8.3×2.73×105 とできますよね。
8.3×2.73 であれば、「8×3=24」だから、「24に近い値かな?」と暗算でも予測がつきますね。
実際に計算をすると、22.659 となります。このように
[1以上10未満の数字]×10□ と直すクセをつけておくと、桁間違いは減らせます。
次に、④→⑤の流れについてです。答として求められているのが有効数字2桁なので、その前の式までは「+1桁」、つまり3桁で計算しましょう。
有効数字3桁/有効数字3桁
にしておきます。
そこから、⑤→⑥では割り算をして、⑥→⑦で四捨五入を行います。
ちなみに、④→⑤で四捨五入せずに22.659のまま割り算しても間違いではありませんが、結局0.132・・・となり、答は同じになります。
計算の時間と精度を考えると、④→⑤の四捨五入をした方がよいでしょう。
7.過去問の効果的な復習の仕方
過去問演習を進めている方に向けて、効果的な勉強法をお伝えしたいと思います。
それは、間違いの分析コメントを残すということです。
受験生を見ていると、意外と多いのが、解きっぱなしにしている方。これでは効果が薄いです・・・
もう少しマシなパターンとしては、間違えた問題の解き直しをする。これは受験生として最低限守ってほしいところですね。
さらには、類題を探して解く方もいます。ここまで行けば及第レベルと言えるでしょう。
ただ、さらに効果的な復習方法として、私がおすすめする方法は、間違えた原因を一言コメントに残しておく、という方法です。
一例をあげますと、次のようなコメントです。
・溶解している溶質と、析出した溶質を混同してしまった
・酸素の分圧を、大気圧の1/5とするべきところを1/4としてしまった
・質量モル濃度(mol/kg)=溶質/溶液と勘違いしたまま計算してしまった
・計算途中での桁ミス(30×8.3=24.9としてしまった)
・全mol=液相のmol+気相のmol が思いつかなかった
・気体の溶解度は、分圧に比例する
・単位のミス
この方法の良い点は、
①コメントを考えるときに、自分の間違えた原因と向き合う
②まとめておくことで、試験の前日や当日に見直しやすいので、本番で回避することができる
という点です。
おすすめの方法は、間違いコメント専用のノートを作ることです。理由としては至って単純で、試験前日や当日に振り返りやすいからです。解いたノートにコメントしてもよいのですが、そのコメントを見直したいときに、(〇の問題を飛ばして見て行く形となるので)探すのに時間がかかるのと、間違える問題の傾向が見えにくいという点がありますね。
間違いコメント専用ノートを作れば、試験直前はそれだけを見て、自分の間違える傾向をしっかり把握した上で入試に臨むことができます。
実際に私が指導した受験生はこれで入試本番の化学で高得点を獲っている、効果的な方法です。
ぜひ試してみてください。
8.まとめ
高校化学は単元の数が多い上、単元ごとにかなり内容が異なるので、模試で何が出るか予想しにくいですし「これさえやっておけば模試で得点できる」という単元は正直ありません。
物理は力学さえ固めておけば、ある程度得点が見込めるのに比べると、慣れるまでがしんどい科目です。
ただ、数学や物理に比べてセンスが必要な科目ではありません。
つまり、誰でも正しい勉強法で進めて行けば、きっと伸ばして行けるはずです。
ここでご紹介した勉強法が、化学の勉強法に困っている方のお力に慣れればこんなに嬉しいことはありません。
完
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