力学が苦手な人が確実に得点していくための勉強法
高校物理で学習する5つの分野の中で、力学が最も重要だと言っても過言ではありません。
その理由を見ていきましょう。
①大学入試の物理の問題で、力学は必ず出題される。
②力学が理解できていないと、他の分野も理解できない。
大学入試の物理問題は、大問が3つ〜4つで構成されることが多く、そのうち1題は必ず力学が出題されます。
5つの分野に対して3つ〜4つの大問ということは必然的に出題されない分野が出てしまい、力学と電磁気学が必出で残り1〜2題が波動、熱力学、原子から出題されるという構造です。
出るか出ないかわからない分野でさえ完璧にしておきたいところですが、必ず出題される力学を捨てるという選択は考えられません。
また、力学は他の分野の土台になるため、力学ができないと他の分野も理解できません。
例えば、力学でエネルギー保存則や仕事というものを学習します。
しかしこれが理解できていないと、電磁気分野で出てくるコンデンサを含んだ回路のエネルギー系の問題や電磁場中の荷電粒子の運動などは手も足も出ません。
このように力学で学ぶ内容は他の分野でも当たり前のように使うので、力学は真っ先にマスターしたいところです。
1.力学のおすすめ勉強法
では早速、力学の勉強法を見ていきましょう。
基本的な流れは他の教科や他の分野と変わらずに、まずは公式をインプットしてから問題演習をしていくのですが、力学ならではのポイントもあるので、細かく解説していきます。
1-1. 力の図示を完璧にできるようにする。
多くの受験生が、他の分野に比べて「力学はなんとなく解きやすい」というイメージを持っていることと思います。
それは力学が他の分野と違って、どのような運動をするかが”感覚的になんとなく”わかるからです。
しかし、力学に限らず物理では、「なんとなく」というのは邪魔でしかありません。
まずは力の図示を完璧にできるようにしましょう。
力学において、力がかかるのは以下の2パターンしか存在しません。
①重力がかかっている場合
②モノとモノが接している面がある場合
力学の問題では、まず重力がかかっていない場合はないでしょう。
ただし重力は垂直方向にかかっていますが、水平方向の運動方程式について議論している場合などは運動方程式に重力が出てこないこともあります。
(*余談ですが、運動方程式を立てる場合はすべての力を必ず図示するようにしましょう。力の抜け漏れから運動方程式のミスにつながりますし、運動方程式を間違えるとその大問をほぼ丸ごと間違えることに繋がってしまうからです。)
また、モノとモノが接している場合には、必ず何かしらの力が発生します。
物体を机の上に置いている場合では抗力が発生していますし、物体をバネにつなげている場合はバネの力が働いています。
重力と、モノとモノが接している面の力を図示すれば、それ以外にかかる力はありませんし、運動方程式のミスもなくなるはずです。
公式を覚えることも大事ですが、まずは力の図示を完璧にできるようにしてしまいましょう。
1-2. 公式を覚える
力の図示の方法を理解すれば、基本的に運動方程式は立てられるようになるはずです。
本来、古典物理学では、運動方程式さえ立ててしまえば、それを積分したり微分したりすればすべての情報が得られます。
しかし高校物理ではそこまで学習することはありませんし、もしそれをしたとしても時間がかかりすぎるので、試験時間のことを考えると現実的ではありません。
位置を微分すれば速度になり、速度を微分すれば加速度になるということくらいを頭に入れておけば十分なので、力学の問題を解く上でよく使う公式は覚えてしまいましょう。
ここで公式を覚える上での注意点があります。ただ丸暗記をすればいいわけではありません。
①文字の意味と単位を理解する
②公式を導出できるようにする
③公式の意味を考え、日本語に解釈してみる
④公式を実際に使ってみる
物理の公式を覚えるときは、上記の4点は必ず意識しておきましょう。
経験上、これを意識できている受験生とできていない受験生では、合格している大学のレベルの差が圧倒的です。
何を使って覚えればいいのか?
物理の公式を覚える際は、基本的に使うのは教科書で構いません。
当たり前ですが、教科書に必要な公式はすべて載っています。
しかし覚えるべき公式がまとまっているわけではなく、正直使いにくいと思う受験生も多いでしょう。
そう感じる方は、参考書で覚えるのもいいでしょう。
なんといってもおすすめは、物理のエッセンスです。
必要な範囲をすべて網羅していながらとても薄く、取り掛かりやすい参考書です。
物理参考書の王道とも言えるもので、大学に入ってからも使える参考書なので、まだ持っていない方はぜひ入手を検討してみてください。
他に意識することはないのか?
物理の公式を覚えるときは、
②公式を導出できるようにする
③公式の意味を考え、日本語に解釈してみる
④公式を実際に使ってみる
の4つを意識すべきとお伝えしましたが、実は他にも意識すべきポイントがあります。
それは「公式暗記に時間をかけすぎてはいけない」ということです。
化学や生物に比べて、物理は覚えるべき内容が圧倒的に少ない教科です。
化学や生物は知識問題も出題されるので、知識を頭に入れたらそのまま点数アップに直結します。
しかし物理はそのような教科ではないので、公式を覚えるだけでは点数にはつながりません。
物理の点数を上げようと思ったら、物理の公式を覚えた上で、「使いこなせる」ようになる必要があります。
そんな物理の特性を考えると、公式暗記に時間をかけている場合ではありません。
公式暗記よりも、実際に問題演習をする時間を十分確保したいのが本音なので、公式を覚えるという作業はできるだけ早く終わらせるようにしましょう。
1-3. 問題演習に取り組む
力の図示の仕方を理解し、一通り必要な公式を覚えたら、次に取り組むのは問題演習です。
力学の場合、この問題演習がとても重要なパートになります。
多くの方が、いま「なんとなく力学がわかる」という状態だと思います。
そのなんとなくを取り除き、「ちゃんとわかる」ようになるには、
・典型的な問題パターンを網羅的に理解する
というこの2つがポイントです。
ピアノを上達しようと思って、楽譜ばかり一生懸命読んでいても、実際にピアノを弾かなければ弾けるようにはなりません。
教科書や、先ほど紹介した物理のエッセンスなどの参考書で基本的な公式を頭に入れたら、自然に使いこなせるようになるために、積極的に公式を使っていきましょう。
いきなり難しい問題から取り組む必要はありません。
まずは学校で配布されている「セミナー物理基礎+物理」「リードα物理基礎+物理」のような教科書汎用問題集で公式を使う練習をしていき、そのレベルの問題集の問題をスラスラと解けるようになれば「良問の風」「重要問題集」「名問の森」などのややレベルの高い問題集に繋げていくのがベストです。
まとめ
今回は力学の勉強法を紹介してきました。
力学は高校物理の基礎で、力学ができないと他の分野もできないといっても過言ではないので、ぜひ今回紹介した勉強法で着実に実力をつけていきましょう。