都立高校の入試のしくみ②【推薦入試って?】
都立高校の入試のしくみ②【推薦入試って?】
今日は、都立高校の「推薦に基づく選抜」についてのお話をします。「推薦」と聞くと、「成績があればオッケーなんじゃないの?」とか、「推薦書を書いてもらえれば受かるのでは?」とお思いの方も少なくないと思います。
しかし、それはごくわずかな私立高校などの「単願推薦」などのお話です(今はまた、減ってもきています)。
また、私立高校では多くが推薦試験を受けて仮に不合格になったとしても、一般試験で「加点(10点プラス、補欠合格の順位が上にしてもらえるなど)」されます。しかし、都立高校においてはそのような措置は全くありません。推薦入試を受けたからといって、学力検査で優遇されることは一切ありません。
さて、では都立高校の推薦について、具体的なお話をしていきましょう。
一言でいうと、都立高校の推薦入試は非常に「狭き門」です。
どのぐらいかというと、平成30年度の普通科では3.13倍の倍率。
3人が受検したら1人しか受からない計算です。中には5倍・6倍を超える学校もあります。これは、学校によらず、ほぼ全ての都立高校で言える話です。
◆誰でも受検できるが、合格者はほんのわずかな数でしかない
なぜそれほどに「狭き門」なのかというと、
①学力検査(いわゆるテスト)がない
②学校ごとの募集定員のうち20~30%しか募集できない
ということが挙げられます。(もちろん、進学指導重点校などは、学力検査と同じかそれより難しい小論文が課されることもありますので、一概にテストがないから簡単とは言えません)
これをどうとるか。時には、
「どうせ受けたって落ちるから、受けるだけムダ」
「宝くじみたいなものだ。とりあえず受けてみよう」
とまで言われることがあります。しかし、推薦入試にしっかり取り組めば、得られるものは必ずあります。
(あろうことか塾や学校の先生方からもそうした声が漏れてきて、なんとも情けない気持ちになるものです。生徒の一生がかかっている真剣勝負に対して、そのような言い方をするということは、その人の思考回路が知れる、というものですね。あ、脱線してしまいました。失礼しました…)
◆推薦試験の仕組み
さて、都立高校の推薦入試には「文化・スポーツ等特別推薦」と「一般推薦」があります。共通することとして、いずれも学力検査はなく、ほぼ全員「集団討論」と「個人面接」の両方を課せられます(一部、集団討論を実施しない学校もあります。各学校の要項でお確かめください)。
それに加えて、
文化・スポーツ等特別推薦⇒実技検査が課せられます。
一般推薦(普通科など)⇒「作文」もしくは「小論文」が課せられます。
今回は、比較的多くの人を対象に「一般推薦」についてお話をしていきます。
◆配点について
まず、合計点のお話からしたほうがわかりやすいので、そこからお話をしていきます。
合計点のことを、「総合成績」といいます。
その内訳は、
☆調査書点…学校の成績・内申のこと。50%が上限です。覚えておきましょう。
それに、
☆集団討論・個人面接の点数+小論文・作文の点数 などを足して求めます。
例として、都立戸山高等学校の平成30年度の総合得点をみてみましょう。
総合得点(800)=調査書点(400)+面接点(200)+小論文(200)
(都立戸山高等学校ホームページより。昨年度のものです)
実際には、この点数の内訳や総合成績については、学校ごとに異なります。募集要項などで必ず最新のものを確認してください。
◆小論文・作文について
この二つは、並べて語られることが多いために、非常に誤解をまねくものになっていますが、大きく違います。
<小論文>
進学指導重点校などの難関都立高校ではほとんど「小論文」が課されます(都立西高等学校は毎年短文の課題に答える作文形式です)。問題は各学校のホームページなどで確認できます。いずれの学校も、「知識だけ」では解答できないものがほとんどです。何が聞かれるかというと、簡単に言えば「表やグラフ、文章の読み取り」、それに基づいて「どれだけ思考を深めることができるか」ということです。
一例として、都立八王子東高等学校のものを挙げておきます。
単純に暗記では対応できるものではない、ということがお分かりかと思います。
<作文>
作文は、テーマまたはタイトルが与えられ、それについて記述するものが主流です。中には簡単な資料の読み取りをするものもありますが、さほど複雑なものはありません。
ただ、何も材料がない分、逆に書きにくいのも事実です。とくに、都立西高等学校の作文の問いは非常に難解なことで有名です。大人でもなかなか難しいと思わせるようなものが多く、受検生を困らせています。ホームページで確認してみてください。
◆集団討論・個人面接
本日の主なテーマの「集団討論」についてお話したいと思います。
その前に、東京都教育委員会のホームページに、推薦に基づく入試についてこのような記述がありますので、ぜひご覧ください。
基礎的な学力を前提に、思考力、判断力、表現力等の課題を解決するための力や、自分の考えを相手 に的確に伝えるとともに、相手の考えを的確に捉え人間関係を構築するためのコミュニケーション能力 など、これからの社会にあって生徒たちに必要となる力を評価し、選抜する。
下線をつけたことが、どのように問われるのか、試験の流れのなかでどう問われていくのか、説明していきます。
<集団討論>
集団討論は、一つ一つのグループに分かれます。グループはだいたい4人から6人程度となることが多いようです。
次に、グループごとに、一つの「テーマ(題)」について20分~30分ぐらいかけて「討論」するのです。ここで注意していただきたいのは、いわゆるテレビの討論番組で見られるような「相手の意見を否定し、こちらの主張を通す」といったものではありません。むしろ、「テーマについていかに円滑に話し合いができるか」ということと、「きちんとグループとしての結論を導き出せたか」ということが主眼になります。
・よくある誤解の一つに「自己主張の強い、意見をしっかり言える人が受かりやすい」というものがあります。間違いではないのですが、「他の人の意見を聞かず、自分の言いたいことばかり言う」ようでは受かりにくいようです。それは、「協調性に欠ける」と判断されます。
・自分の意見を言えなかったり、ほとんど黙っていたりするのも印象が良くないでしょう。それは、「コミュニケーション能力に難がある」とされるからです。
・ただ単に「とりあえず」しゃべったり、考えなく発言したりするだけでは「思考力や表現力」に欠けるとされかねません。とくに、他の人の話をふまえず、またテーマからそれた発言ばかりしていると、「協調性・コミュニケーション能力・そして判断力」にも問題があると思われかねないからです。
さて、ではどうした対策を取る必要があるかというと、
「合格者と不合格者の両方の言い分を長年にわたって聞いてきた」指導者に聞く
というしかありません。学校の先生、塾の先生がそれにあたるでしょう。
いずれにせよ、これは「ぶっつけ本番」でクリアできるものではないので、できれば複数回練習しておく必要があります。また、練習するときは、「知らない人」が一緒にいたほうがよいので、その点は塾なども利用できますね。ちなみに、究進塾では私(さくさく編集員)が、合格者と不合格者から毎年インタビューした蓄積をもって指導にあたっています。
※(実は、一つのグループのうち数名だけが合格、逆に一人だけ不合格、というケースは少ないのです。かなりの確率で「グループ全員が合格」「グループ全員が不合格」となるのですが、対処方法はあります。が、ここには書ききれないので、後日別の記事にするか、講座で直接ご説明します。)
そして、話し合いの「テーマ」ですが、これについては学校または年度によってばらばらです。ふつうは数分間、最初に考える時間が与えられることが多いですが、一つ言えることは、過去の出題例などを知っておき、ニュースなどについて関心を持つこと。そして、意見をしっかりと持っておくことです。
一発勝負で終わらないように、しっかりと対策をとっておきたいですね。
<個人面接>
集団討論にくらべると、比較的オーソドックスな「面接」のイメージが当てはまります。
時間は10分弱のところがほとんどで、中には5分程度の生徒もいます。
注意していただきたいのは、事前に自己PRシート(採点対象ではない)を提出しますので、それに基づいて質問されたり、もしくは集団討論のテーマについて問われたりする、ということです。ある程度は「想定質問」を予想し、きちんとどう答えるか、という方針を立てましょう。
かといって、質問への答えを「丸暗記」してはいけません。これでは、逆に声や表情が不自然になることが多いですし、万一忘れてしまったら大慌てになります。箇条書きのメモを事前に見直しておく、程度で構わないでしょう。
それ以外に、質問項目としては「過去(中学校生活まで)」「現在」「未来(高校生活から社会人になるまで)」という分類ができるでしょう。
過去…中学校生活の思い出、得意科目、部活動などで得た教訓など
現在…長所と短所、志望理由※など
未来…高校でやりたいこと、将来の職業(未定でも全く構いません)など
※志望理由については、各高校が「求める生徒像」というものを示していることが多いので、それに合致するような形で整理しておきましょう。もちろん、自分の将来にからめて話せるようにしておくこと!
個人面接などは、学校でも対策をしてくれることが多いですが、多くは直前期です。それ以外にも、塾などを利用して早めに練習しておくことです。
集団討論・個人面接ともに「頭でわかっていても…」仕方ないので、
必ず練習をしておくことです。各科目の学習に比べれば少ない労力で済みますし、また必要以上に労力をかけてもいけません。
◆おわりに
さて、いかがだったでしょうか。
推薦に基づく入試では、各学校のカラーが顕著に出ます。「学校が求める人材」に少しでも近い生徒を取ろうとするわけですね。
5科目の学習とは分けて、まずは「実践」することが必要です。
そこで出てきた修正点を謙虚に直す、ということができれば、実はこれ以上成長につながる体験はないのかもしれません。
また、これは私が過去多くの高校受験生を指導してきた結果を踏まえて申し上げるのですが、推薦入試にある程度準備をした生徒は、推薦の合否に関わらず、最終的には満足のいく結果が出せていることが多いです。ある意味、この経験を「息抜き」という風に楽しむ余裕もあってよいのかもしれません。また、意外にも、「国語の200字作文に、推薦でやったことが生きた」という生徒も少なくありません。
「宝くじ」ではなく、「自分を耕す経験」として、推薦を利用しましょう!