早慶附属・系列高校それぞれ何が違う?学校紹介と出題傾向からみるおすすめ進学先・早稲田編
高校受験で私学を視野に入れている人にとって、「早慶」という選択肢は魅力的に見えるものです。ところが早慶付属校・系列校の数は多く、内情は実に複雑で、リサーチしづらいもの。
本記事では、首都圏から通学可能な早稲田大学の付属校・系列校の校風と出題傾向を見ることで、どの学校がどんな人におすすめか、解説します。
目次
1. 附属と系列
(1)組織の違い
まず押さえておきたいのは、早稲田(慶應)には「附属校」と「系列校」がある、ということ。
何が違うのかというと、大学組織(本部)との関係性です。
附属校は、大学と同様の学校法人に属し、大学直属の機関となっているのに対し、系列校は、運営母体が大学とは異なる法人となっています。(街で見かける「直営店」と「フランチャイズ・チェーン」の違いのようなものと思ってよいでしょう。)
(2)メリット・デメリット
附属校・系列校には、当然メリット・デメリットがあります。
附属校のメリットは、大学と同一の組織に属する「老舗」の学校であるというところで、早慶ともに、ほとんど大学のような雰囲気があります。つまり、比較的自由な校風で、ハイレベルな教育を受けられる。その上、勉強以外に打ち込む時間も十分ある、といった具合です。
もちろんデメリットもあり、外部の大学へ進学するためのルートが、ほとんど整備されていないということです。
一方で、(これは特に早稲田に顕著な傾向ですが、)系列校の場合は、大学への内部進学の定員が限られていることもあって、外部を受験する人も少なくありません。
このメリットは、普通の進学校よろしく、ハードな勉強をこなすスタイルになります。外部受験のプラットフォームが整っていると言ってもよいでしょう。また、部活や課外活動に力を入れている系列校も多いです。
しかしデメリットもあり、内部進学がしにくい、という点です。早稲田大学への切符を最優先に考えるなら、やや渋い選択となります。
(3)要するに…
要するに、附属校は良くも悪くも大学風、系列校は良くも悪くも普通の進学校風だ、ということですね。
そのあたりを踏まえて、進学先を選択するとよいでしょう。
2. 早稲田の附属校
(1)早稲田高等学院(練馬区上石神井)
■校風など
早稲田附属の中では代表的となる伝統校。通称「学院」。男子校。校風は自由(校則がほぼ存在しない)。部活にはあまり力を入れないが、大学の施設を利用して練習できる部もある。帰宅部もそれなりにいる。
学習面では、ほぼ全員が早稲田大学に入学することを念頭に、レポートや卒論、第二外国語、英語教育に力を入れている。受験がない分、進学の考査が厳しめで、毎年数人留年する。
■出題傾向
入試科目は、英・国・数・小論文の4科目。英語・国語ともに読解系統の問題に比重が置かれる。数学も、応用を利かせた問題が多い。全体的に、発想力・柔軟性が問われる。
■どんな人におすすめか
校風的には、学習・取り組みを自分のペースで進めたい人向け。また、学生も統制されておらず、玉石混交・多種多様なので、そのあたりのダイヴァーシティを楽しめる人向け。
入試面では、全科目で応用的なことが得意な人に向いています。基礎をしっかりこなした上で、アドリブに慣れておくのが大事です。
また、3科目の評価は基本的に比重が同じなので、得意科目が1つでもあれば有利です。苦手科目はせめて1つに押さえておくとよいでしょう。
(2)早稲田大学本庄高等学院(埼玉県本庄)
■校風など
通称「本庄」。基本的には練馬の学院と同様、早稲田大学への進学が前提となる。校則はほぼなく、自由な校風である。
本庄が学院と違うのは、何と言っても「共学」ということ。自ずと生徒のモラル・マナーがよい。
学院が派手で賑やかだとすれば、本庄は落ち着いていて、穏やかな環境で過ごすことができる。
学習面では、学院同様、レポート・卒論などに力を入れており、大学への進学準備が整う。しかし、第二外国語のコマが2年次から始まるようになっており、その点は3年間通して学習する学院とは違う。本庄は1年次の基礎教育に熱心であり、教育的配慮があるとも言える。
■出題傾向
国・数・英の3科目。
国語は論説・随筆ともに堅めの文章。漢字や語彙も難しいので、そういう文章が読めると強い。また、記述力が問われる設問が多い。
数学は、基本的をこなした上での応用ができるとよい。学院のような柔軟性を問う問題というよりは、スキルを使いこなすことができるか試されている。堅実に積み重ねられる人向けか。
英語も数学同様、基礎からの応用がポイント。文法に比重がある。
■どんな人におすすめか
校風的には、共学、立地なども影響して、穏やかな雰囲気を好む人に向いている。人口に膾炙した「高校生活」を送りたいという堅実な人は、学院よりも本庄がおすすめ。
入試面では、基礎をしっかり勉強することができる人に向いている。つまり、英文法の正誤問題や空所補充が得意であったり、国語の漢字問題、数学の計算が好きな人には向いているだろう。
逆に言えば、英国で読解が苦手だったり、数学でいくつかの法則・公式を用いて解を導くような図形問題などが苦手だったりするならば、学院よりも本庄向けではないだろうか。
3. 早稲田の系列校
(1)早稲田実業高等学校
■校風など
通称「実業」。共学。雰囲気は、一般的な公立高校とさほど変わらない。校則も普通にあり、ほとんどの生徒が部活をする。言わずと知れた野球の強豪で、スポーツ全般に力を入れる。
学習面でも、一般的な高校と似ているようだ。第二外国語は必修ではなく、卒論もない。大学受験をするマスと同じような教育が受けられるので、内部進学者というコンプレックスを感じにくい。
進学率について大事なことは、9割以上の学生が早稲田大学に進学できること。系列校は進学しにくいと言いましたが、実際、一応はかなりの数が進学できるので、その意味では安泰。
しかし、附属校と違って不利なのは、学部からの定員枠が少ないということ。つまり、希望通りの学部に行けるかどうかは、高校での成績次第になってくる。(学院の場合、それなりの成績を取っていればほとんどどの学部でも選び放題。)
そのため、成績の競争はあり、定期試験などは気を張って打ち込まねばなりません。
■出題傾向
国・英・数の3科目。基本的に、学院・本庄に比べればハードルは低い。
すべてについて、基礎をしっかりこなすことがポイント。その上で、一般的な演習問題を解けるようになっていれば、十分可能性がある。
公立を視野に入れつつ、私学も受けたいという方にとっては、公立対策の延長で準備しやすいので、おすすめだ。
■どんな人におすすめ?
公立の高校と併願する人に進めたい。校風的にも、試験問題的にも、(学院や本庄は私学なりのクセがあるのに対し、)公立の学校と親近感があり、突出したものはすくない。
また、部活などに打ち込めるので、スポーツが好きな人にもいいだろう。
(2)早稲田高等学校(東京都新宿)
※中学入試のみで、高校からの入学はない。
高校受験では入学できないので本記事ではおまけ扱いとした。
参考までに、校風についてのみ触れておく。
■校風など
すでに述べたように、基本的には普通の進学校。通称「わせ高」。男子校。真面目な生徒が多い印象で、いわゆる進学校の男子校のイメージにぴったりはまる。
何より立地がよく、早稲田から徒歩すぐで、大学よりもアクセスがよい。また、どの附属校よりも大学に物理的に近い。
学習面で重要なのは、早稲田グループの高校の中では、かなり早稲田大学進学率が低いということ(5, 6割程度)。東大・一橋などの大学への進学者が多く、完全に外部進学にコミットしている。
まとめ
以上、首都圏から通学可能な早稲田の附属・系列として、3校を紹介しました。
興味深いことに、校風の自由度・個性の強さと、入試問題の難易度が正比例して、実業→本庄→学院の順に上がっていきます。
出題傾向もこれに沿っていて、大雑把に言えば、基礎+応用+柔軟性の学院、基礎+応用の本庄、基礎の実業、といった具合です。
学校を決める際には、生徒や雰囲気の好みも重要ですから、以上のような違いを踏まえて、実際に見学し、過去問を解いて、志望校を絞り込んでいくとよいでしょう。