大学入試改革の新課程「歴史総合」とは?変更ポイントといまできる対策
少し前から話題となっていましたが、文部科学省による大学入試改革の一環として、「歴史総合」という新たな必修科目が追加されます。
影響を受ける学生は、2022年度以降に高校に入学するすべての学生で、大学入試科目として設置されるのは彼らが受験する2024年度からです。
変更の内容としては、日本史と世界史の近現代が一緒になったような感じです。
そもそも歴史教育の改革のモチベーションは、現過程では疎かになりがちな近現代史の領域で、とくに日本と世界のグローバルな繋がりについての理解を深めることにあります。
なので、これまでやってきた、世界と日本について別々に勉強するようなやり方を取らず、今の私たちに直結する歴史的背景を勉強する、という形になるわけです。
その他細かい情報は、さまざまなサイトやメディアによって紹介されています。特に重要なのは日本学術会議による提言(http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/kohyo-24-t283-2-abstract.html)ですが、これもオンラインで閲覧できます。
詳細はそうした仕方で調べていただくとして、ここでは、
[1] 歴史総合の導入によって高校生の学習法はどう変わるのか
[2] 現在の小中学生・その保護者にどんな対策ができるのか
この2点にフォーカスをあてていきたいと思います。
1.歴史総合では学習法はどう変わる?
歴史総合導入の影響を受ける学生が、一番気にしているのはここだと思います。
まず前提ですが、現時点では、どういう試験問題が出題されることになるか、具体的なことはあまり明らかになっていません。ですから、具体的な勉強法の変化についても、まだもう少し様子を伺う必要がある部分が多く残る段階です。
ですが、現時点でも、歴史総合の理念と対象範囲から、ある程度のことは予想できます。
理念というのは、グローバル化が進む現代社会の、直接の背景となっている様々な歴史的経緯を学ぶこと。また、これを通じて日々私たちが触れる歴史的問題について自分の頭で考え、自力で判断する素地を養うこと。
範囲というのは、近現代の日本を含めた世界史ですが、特に重点が置かれるのは、日本の視点で言えば開国後・明治維新後の近代化を進めた時代から、現代に至るまでの間です。
具体的な変更点
こうした観点から、主に次のような変更点が提言されているので、実際どのように変わるのか、予測も含めて紹介していきます。
① 自分の頭で考える→選択式の問題でも、複数の正答が用意される。=消去法では解きにくくなる可能性がある。
② 自力で判断する→図表やグラフを読み解く問題が出る。イメージとしては、地理で気候のグラフなどを見たことがあると思いますが、それに近いでしょう。国家予算の増減や人口の推移などから、世界の情勢を読み解くような問題が出ると予想できます。
③ 近現代を中心に→植民地主義の時代から、第一次世界大戦、第二次世界大戦への流れが重要。これまでの内容と比較して言えば、日韓・日中・日米など、現代でも禍根が残り続けているような複雑な国際関係が、どのように生じたのかに焦点が集まることでしょう。
④ 現代の範囲→環境問題やジェンダー、ハラスメントやポピュリズムなど、抽象的な概念が重視される。現代の歴史というのは奇妙な言い方で、進行中の問題について歴史的に学ぶのは難しいです。
そのため、現代の部分は、歴史的な事件や事実を問うことよりも、現代社会の根底にある問題を抽象的・一般的な形で扱うことに傾くでしょう。
学びへの影響
他にもいろいろありますが、特に大事な変更点は上の4点でしょう。
さて、実際に勉強する側からすれば、どういう変化があるのでしょうか。
ポイントは、これらの全部の点で、特に2点目が顕著ですが、「アクティヴ・ラーニング」が目指されているということです。
アクティヴ・ラーニングとは、受け身ではなく自主的・積極的に問題を解決するタイプの学習です。グラフや表を自力で紐解くというのも、まさにその一環ですね。
つまり、勉強する側からしても、暗記偏重の勉強の比重を減らし、技術的な面を鍛えていく必要があるということです。
実際これまでの歴史科目は、暗記の占める割合がかなり多かったことと思います。もちろんこれからも、年号や人名を暗記する必要はあるのですが、暗記の比重が少なからず落ちるでしょう。
反対に、抽象的なことを捉える思考力や、数字の羅列から事態を描き出すスキルと想像力、などなどに力を入れることになると思われます。
こういう変化は、暗記が苦手だった人には嬉しいですが、反対に得意だった人には少し残念かもしれません。自分の弱点を自分で見つけ、補っていくことが大事になるでしょう。
2.いまからできる対策は?
いまの小学生・中学生やその保護者は、どんな対策ができるでしょうか。
すぐに取り組むことができるのは、身近な社会問題を察知する嗅覚を身につけたり、その歴史的背景を考える癖をつけることでしょう。
小中学生も、SNSや新聞・メディアなどで、否が応でも国際問題や社会問題を目にしていることでしょう。たとえば、アメリカ大統領選挙や中国の人権問題など、さまざまなニュースに私たちは触れています。
こういうニュースを見たときに、「なぜこんなに問題が拗れているんだろうか」と疑問に思う完成が、まずは大事になります。
保護者からすれば、日常の団欒の場面で、そういう話題を持ち出して話してみるだけでも意味はあるでしょう。しばしば言われるように、日本の学生は友達同士で政治的・社会的な会話をしにくい関係にありますから、歴史総合で問われるような能力を培うきっかけに枯渇しています。
もし学校の授業でその点が触発されていないように見えたら、家庭でできることをやってみるのもありでしょう。
また、身近な問題についてのリサーチ能力が問われる面もあります。
社会問題を察知する嗅覚はSNSで刺激されて育てられることもあるかもしれませんが、SNSだけでは、確かな情報を手にする技能の成長は期待しにくいのも事実。そういう時は、やはり新書など手軽な書籍を購入してみるのもありでしょう。
そういった書籍には、図表がふんだんに使用されるものもありますので、まさにそうした読解技能を鍛えることになります。
この点でも、本人のみならず保護者の参画がプラスに働く面があるでしょう。
まとめ
歴史総合の導入に関して、学生に実際にどんな影響がでるのでしょうか。細かい点は、現場の教師にもかかっていますし「やってみないとわからない」面があります。
ただ、大きな心がけとして、「アクティヴ・ラーニング」がキーワードになってくるでしょう。
まずは身の回りのことから、歴史について考えてみること、そして保護者がそれを支えること、これらがいまできる対策なのではないでしょうか。
アクティブ・ラーニングについてはアクティブ・ラーニングで変わる大学受験〜損しないための注目ポイント〜を参考にしてみてください。