中学数学の家庭学習に向けて周りの大人がサポートできること

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1.はじめに

本記事では、中学数学を学ぶ当人(中学生)ではなく、その当人を見守る保護者や友人、すなわち当人の周りの大人をターゲットとして、周りが当人に教えてあげられることは何か、という問題について考えていきます。

中学校にはいると、国語、英語、数学などほとんどの科目が、小学校からの単なる延長ではなく、本格的な内容を含み始めます。ひとことで言えば、科目の楽しさが膨らむ代わりに、難しさも飛躍してしまうのです。

中学に進学した当人は、勉強がきわめて難しくなったばかりではなく、環境の変化、人間関係の変化などにさらされ、おまけに、思春期という難しい年頃に突入します。要するに、周りの大人たちにしてみれば、これまで以上に、子供の勉強を見てあげるハードルが上がってしまうのです。

しかし、中学レベルの学習内容であれば、親や保護者が監督してあげることによって、成績の向上が望まれるというのも、また揺るがない事実でしょう。

そこで本記事では、(中学生の心理を踏まえた学習指導法についてはスルーしますが、)数学の学習において、親が子供に教えてあげられることは何で、教えてあげるべきことは何なのか、ということについて、塾講師の観点から所見をお伝えしていきます。

2.子どもは家庭学習に何を求めているか

まずはっきりさせておきたいのは、家庭学習において子どもが学ぶべきことは何なのか、という点です。

先に結論を述べるなら、子どもが求めているのは、理論的な説明ではなくて、「わかる」という経験だと言えるでしょう。

小学生の子どもならば、家庭学習において求めているものは、学校で学ぶ事柄の単純なサポートだと言えます。

つまり、学校で学んだことのうち、わからなかったこと得られなかった知識を、家庭で復習、あるいは予習します。

高校生までいけばもっと単純で、時間のかかる課題を家でやり、そのチェックや指導を学校や塾が担っている、というシステムに移行します。

この場合では、残念ながら親御さんが勉強面でサポートすべき事柄は多くありません。

しかし、中学生の学習においては、事態がより複雑になります。

コマ数が増えることにより、学校ではテキストや問題集を用いて反復練習を行うことが一般的になります。また、暗記すべき公式や概念が膨大に増えることにより、本人のキャパシティを超えてくる部分が出てくるでしょう。

そういったときに、家庭で子どもの学習をどのようにサポートするべきでしょうか。

ここでは2つのポイントを紹介しましょう。

家庭学習のポイント⑴.反復練習

まず1つめのポイントとなるのは、反復練習の機会を整えることです。

数学では、算術(arithmetic)であれ幾何学(geometry)であれ、中学レベルでは、反射神経とも言うべき、レスポンスの速さが問われる場面が多いです。

たとえば、

8a2b÷(–6ab)×3

のような、一見複雑な式を求める場合に、「何から始めるか」をいちいち悩んでいては間が持ちません。

まずは割り算を分数の掛け算に直すところから始めるのが定石とは思いますが、とにかくそういう自分なりのやり方に、迷わず着手できるということが、回答速度に大きく影響します。

また、回答に対する自信の程度に関わり、メンタル面の支えにもなります。

こうしたレスポンスの速さをあげるためには、何度教科書を読んでも仕方なく、やはり「何度も解く」という経験が重要になります。

しかし、こうした反復練習はひっきょう時間のかかるものですから、塾や学校ではなかなか面倒をみきれない部分がある、というのも実情です。そこで、多くの塾や学校ではこれを宿題として家庭に委ねているわけです。

こういうわけですから、家庭学習の任務として最も重要なことは、子どもが問題集や参考書を用いて反復練習する場を整え時間を管理し、包括的に機会を提供してあげることだと言うことができます。

もちろん子ども本人のペースに干渉しすぎては良くないですが、やはり、学習のルーティンを支えてあげるのは重要な仕事ではないでしょうか。

家庭学習のポイント⑵.「わかる」ことの経験

ところで、家庭学習にとって重要なことは、上のような反復練習の機会提供のみではありません。

むしろもっと本質的なのは、子どもが数学の問題についてじっくりと思考し、最終的に自身の経験にまで問題を落とし込み、これを腑に落ちる仕方で「把握する」、このプロセスを味わわせてあげることでしょう。このプロセスのことを、ここで私は「わかる」ことの経験と呼んでいます。

というのも、がんらい反復練習が家庭に委ねられているのは、塾や学校側の時間的制約によるところが大きいからです。言いかえれば、反復練習そのものに限って言えば、時間さえ許せば、塾や学校で取り組んだほうがより望ましいとさえ思われます。

しかし、私がここで言っている「わかる」という経験についてはその限りではありません。

なぜならここで重要なことは、反復練習などを通じて得た数学的な知識が、いかにして、私たちの経験する日常的な世界の構造とかかわっているのかを会得することだからです。

少し抽象的な言い方になってしまいましたが、こんなふうに考えてください。

①〈三角形の内角の和は二直角に等しい〉という命題が真だと理解することと、②〈私の目の前にあるこの三角定規(三角形)の内角の和は二直角に等しい〉ということが真だと理解することとの間には、違いがあるのではないでしょうか。

若干ややこしいですが、前者①は一般的な主語についての理論的な知識でしかないのに対して、後者②の方は、私の経験について成立する個別的な事態を扱っています。

要するに両者の事態は、理論と経験というふうにして区別することができると言うことができるでしょう。

まとめてみます。

① 三角形一般についての理論的知識:教科書を読むことで知られ、繰り返し練習することで定着する。

②  個別的な三角形についての経験的知識:理論的知識をじっくり考察し、自分の身近なものと関係づけることで体得される。

ややラフな整理ではありますが、このふたつのタイプの知識のあり方はやはり大きく違っています。

そして、言うまでもないことですが、自身の経験に照らして理論的知識を把握していく道のりは、学校や塾での集中的な反復練習によるよりも、身近な人とコミュニケーションをとりながら、身近なオブジェクトについて思考することによって、よりいっそうスムーズに歩まれるものだと考えられます。

この点にこそ、数学の家庭学習の大きなアドバンテージがある、と私は考えています。

過去に指導した生徒たちをみても、自分自身の身近なオブジェクトについての幾何学的・算術的な知識をもっている子どもと、単に教科書を暗記した子どもとの間には、数学の理解度定着度、それから応用レベルにおける伸び代において、少なからず差異を認めることができるからです。

以上をまとめると、数学の家庭学習におけるポイントは、

⑴ 知識を定着させるための反復練習の時間を確保すること

⑵ 理論的知識を経験的知識に移行させるための考察の機会を提供すること

この2点につづめることができます。

そして、特に大きなアドバンテージは、この第2点、すなわち、経験的知識の獲得においてみてとられると考えられます。

3.家庭学習の具体的な進め方

以上より、家庭学習において子どもがなすべきことについて、ある程度の見通しが立ったと思います。

それでは、周りの大人は具体的にどうサポートするべきでしょうか。

ここで重要なサジェスチョンは、第1に、⑴反復練習を進めたあと、そこで学習を終わらせずに、⑵経験的知識の獲得へと進む機会を与える、こういう順序を確立することでしょう。

ここでは、話を明晰にするために、具体的なトピックについてかんがえてみましょう。

たとえば、中学生が学ばなくてはならない最も重要なトピックの1つ、図形の問題から、最も単純なものを取り出しましょう。

先ほども触れましたが、〈(すべての)三角形の内角の和は二直角に等しい〉という、(ユークリッド幾何学では)真である命題が与えられたとします。

このとき、中学生がふつうに教科書を読んで学んでいるかぎりでは、「三角形の内角和=180度」という知識を覚えて先に進もうとするでしょう。

ここで、第1のステップです。「三角形の内角和は二直角に等しい」ことを、反復して暗記する。

これは、まずは理論的な知識の獲得という、不可欠のステップにあたります。これを知らないのでは、経験的知識もなにもありませんし、すぐに思い出せないのでは、納得するには程遠いところにいるということになります。

そこで、見守る大人としては、学生がこの文字列「三角形の内角和は二直角に等しい」を、完全に暗記するまでは、横で見ていることしかできませんし、それ以上すべきでもありません。

しかし、完全に暗記したと判断できたら、今度は焦って次に行く気持ちを抑えてやって、次のステップ2に進みます。つまり、この知識を咀嚼していく過程です。

具体的には、いくつかの方法がありえるでしょう。

たとえば、「本当に〈すべての〉三角形の内角和が二直角だろうか?」と問うてみるのもよいでしょう。

言いかえれば、「内角和が二直角にならないような三角形を(平面に)作図してみよう」とふっかけてみる、ということです。

結果的には、そのような図形を平面に作図することは絶対的に不可能なので、(できたらユークリッド以来の神童です)子どもはその検証プロセスを通じて、三角形の内角和が必然的に二直角であることを知り、同時に、二直角ではないということが不可能であることを知ります。

こうして、肯定的な形で示された同じ主張について、否定的にも言明しうることを経験的に知了するのです。

別の仕方もありえるでしょう。基本的には上のものと同様ですが、「三角形の内角和が二直角であるのはなぜか?」と問うてみることもできます。

この場合には、内角和が二直角でない三角形を作図する場合よりは高度なこと、すなわち、当の命題についての証明を与えることが要求されます。

この場合には、たとえば三角形を2本の平行線のあいだに置いてみたりして、検証してみることが必要でしょう。

もちろん、証明の形に仕上げる必要はありませんが、証明しようとしてみること、そして、これを通じて、三角形の内角和が「なぜ」二直角になるかということについて経験的な知識を得ること、このプロセスが重要なのです。

このときにも、横で見守る大人は、問いを発することのみに努め、あまり答えを急かさず子どもの思考を追体験することが肝要なのではないでしょうか。

いずれにしても、このようないくつかの仕方で、理論的な知識を経験に落とし込むことを促すことができますし、これこそ、子どもが家庭で数学を学習する際のおおきなアドバンテージということができます。

まとめ

以上、子どもが数学を家庭で学ぶさい、何を学ぶべきか、ということについて、家庭学習に求められているものを指摘し、これについて具体的な方途を考察しました。

まとめると、家庭学習には、反復練習の時間確保と、経験的知識の獲得という、ふたつの点が要求されているということが指摘されました。

また、とくに経験的知識の獲得に向けて周りの大人は何をするべきかについては、子どもの思索を促し、これを見守ることだと述べました。

具体的には、既得の理論的知識について、その本質に関わるような疑問を提示してみて、これを検討させてみる、というのがその方法です。

著者情報

究進塾 編集局

究進塾 編集局
東京・池袋にある究進塾の編集局です。受験指導のプロが大学受験に役立つ情報をお届けしています。 大学受験対策コースはこちらからご覧いただけます。

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