慶応文学部の小論文が難しい理由とは?

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小論文の対策が難しいとは、よく言われることですが、中でも、慶応大学の文学部で実施されている小論文試験(以下、「慶応小論文」と略記します)は、他を寄せ付けない難しさを呈しているようにみえます。

そこで、本記事(と次の記事)では、慶応小論文の対策としてやるべきことの第一歩として、その特色と難しさの正体について、見通しよく案内していきます。

本記事では、
「慶応文学部を志望しようかどうか悩んでいるけど、小論文にどうアプローチすればいいかわからない」
「過去問を解いてはみたけど、難しくて、どう勉強すればいいかわからない」
などといった悩みを抱える受験生にむけて、〈慶応小論文の仕組み〉や、〈何が難しいのか〉といった点について、初歩から解説していきます。

いうなれば、慶応小論「入門編」です。

1.慶応小論文対策としてやるべき3つのこと

なによりもまず、慶応小論文対策のステップを簡単にまとめておきましょう。

筆者としては、常に3つのステップを意識するように促しておきます。

1/ 敵を知る:出題の構造・特色を把握する
2/ 準備する:基本的な作文ができるようにしておく
3/ 洗練する:高得点を狙える作文技術を身につける

以上、3ステップです。

いきなり最高レベルに挑戦しようとしても、効率が悪く、躓く確率が上がってしまいます。
急がば回れというもので、まずは、敵を知ることから始めるのが賢明でしょう。

本記事は、もっぱらこの第一のステップ、つまり、慶応小論文の特色をあぶり出すという作業に専念することにします。みなさんも、まずはここからはじめていきましょう。

そういうわけで以下、慶応小論文の問題形式・傾向をおさえていきましょう。

2.問題形式

慶応小論文の問題形式は、ここ数年変わらず、シンプルなものです。

  • 問題文:他の大学・学部の試験に比べれば、かなり長め・難しめ。
  • 設問の種類:設問は二問。①要約問題と、②自分の見解・立場を述べる問題。
  • 論述の長さ:二題とも、比較的短めです。①も②も、だいたい300–400文字ほどです。

このように、慶応小論文は、基本的にはシンプルな問題設定です。

しかし、それではなぜ、慶応小論文は難関なのでしょうか。慶応小論文の難しさは、問題文のレベルの高さと、設問(問い)の掴みにくさにある、と言えます。

いずれにしても、問題構造はシンプルで、正統派の難しさをもつ、とまとめてよいと思います。

3.問題傾向、あるいは難しさの正体

すでに述べたように、慶応小論文の難しさの正体は、問題形式などの表面的な面にではなく、問題の内実、つまり、問題文と設問のレベルの高さにあります。

それでは、実際に、どのような難しさがそこにあるのでしょうか。
1/ 問題文と2/ 設問のそれぞれについてみていきましょう。

3.1.問題文の難解さ

問題文が難しいといっても、どんなふうに難しいのでしょうか。それをはっきりさせるために、ここでは、慶応文学部の小論文の出題傾向に即して、その難しさのタイプをいくつかにわけてみていきましょう。

  • 議論水準が高い

まず、慶応小論文の問題文は、そもそも議論の水準が高めに設定されています。

ところで、「議論水準が高い」とは、どういうことでしょうか。

わかりやすく言えば、或るテクストで、想定されている読者層のレベルが、高いということです。言わずもがな、児童文学や小学校の教科書は、新潮文庫や高校の教科書よりも議論水準が低いですし、岩波新書や講談社メチエは、専門書や論文、学会誌よりも議論水準が低いということになります。

慶応小論文の想定している議論水準は、ここでいう岩波新書や講談社メチエ程度にあたります。わかりにくければ、〈大学の教養課程(1–2年生)レベル〉とか、人文学(文学部で研究されている諸学問)の入門書程度、などと言い換えても構いません。

この水準は、ほとんどの高校生にとっては、「難しい文章だ」と感じて当然のものと言えるでしょう。

さて、議論水準の高さによって,次の3つの困難が派生してくることになります。

  • 語彙の専門性が高い

議論水準が高いということは、用いられている語彙のレベルも高いということです。

あまり耳馴染みのない言葉や言い回しに、たくさん出会うことになるでしょう。また、その世界では名の知れた人物やテーゼが、説明なしに導入されることもあります。

たとえば最近では、「アーレント(Hannah Arendt, 1906–1975)」、「中動態(genus medium)」、「隠喩・換喩(métaphore/métonymie)」などの人名・用語について、補注なしの出題がありました。

もちろん、これらの用語の定義と意味とが空で言えるような人には問題ないのですが、ほとんどの受験生は、こうした専門性の高い単語の前ではたじろいでしまうのではないでしょうか。

  • 構造が複雑

議論水準の高さから出てくる別の困難は、議論の流れが複雑になってくることです。

議論の流れというのは、はじめから終わりまでの筋道のことです。もちろん、桃太郎やシンデレラは構造がシンプルなので、(あるいはありふれているので、)私たちの多くが、そのストーリーを覚えることができます。童話に限らずとも、村上春樹や村上龍などの小説であれば、同じように構造が単純だということができるかもしれません。

しかし、もっと高度な文章になると、そうはいきません。(具体例が知りたい人は、本棚の岩波青を手にとって見るといいでしょう。持っていない人は、適当な新書でも構いません。)

さきほど提示された問いがどこで解決されているのか、さらに次の問いはどのように出てくるのか。こうしたことが、複線的に、つまり、同時並行的に、進んでいくことになるので、常に、自分がいま読んでいる箇所が、何を、何故、何のために、論じている箇所なのかということを、意識しておかなくてはなりません。

  • 文章が論理的

さて、最後に指摘しておくべきは、文章のロジックの堅さです。文章のロジックが文字通り堅牢であるということは、しっかり読めば意味がわかるということですから、テクストを読む上では大歓迎なのですが、小論文を書くとなると、そうはいきません。逆に、ロジックの緩いテクストのほうが、作文する上では楽だったりします。

たとえば、かつてセンター試験の問題となり、難解さが話題となった小林秀雄「鍔」(『小林秀雄全作品』第19巻、2004)などは、(いい意味で)ロジックのない、意識の流れに沿った、きわめて自由な文体をたたえています。

ですから、もしこれについて小論文をかけと言われたら、正解はありませんし、自分の気に入った箇所を拾って、話を膨らませれば良いだけです。要するに、テクストが自由に書かれたものならば、小論文も自由に書ける、というのが大概です。

しかし反対に、テクストが論理的に書かれている場合には、そのテクストにとっての末端の部分と中心の部分がはっきり分かれてしまいます。そのため小論文を書く際にも、中心部分を拾えているかどうかが、明確に問われることになるのです。要するに、テクストが論理的に書かれているならば、小論文も論理的に書かねばならないのです。

結局のところ、慶応の小論文には、読むだけでなく、書く上でも困難が残るということです。

3.2.設問の答えにくさ

続いて、設問の難しさについても、最低限明らかにしておきましょう。

設問の難しさは、問題文に比べればシンプルで、一点に絞ることができます。つまり、「問いが大きくて、何を答えたらいいかわかりにくい」ということです。

具体的に考えていきましょう。
問題文を読んで「自由とはなにか」「科学的知識とはなにか」「名付けるとはどういうことか」について答えなさい、という設問が実際にありました。このような設問は、明らかに、「大きい」問いと呼ぶことができます。

理解を手伝うために、「小さい」問いについて考えてみましょう。
「今何時ですか」とか、「あなたの名前は何ですか」のような問いは、極めて単純で、小さい問いです。これらの特徴は、或る程度答え方の決まったものなので、日本語で聞かれれば、ほとんどの日本人が戸惑うことなく答えることができるということです。(「10時です」とか、「太郎です」とか、あるいはせいぜい、「わかりません」とか。)

しかし、「自由とは何か」という問いかけについては、何を答えたら良いのかわからない、というのが、正直なところではないでしょうか。じっさい、このような大きい問いを満足させる定義を、正面切って考えようとしてしまうと、試験時間内に収めるどころか、10年はかかってしまうでしょう。

このような点に、慶応小論文の設問の難しさがある、ということができます。そして、課題となるのは、大きい問いへの答え方を、身につけることでしょう。

まとめ

以上、慶応小論文の問題形式と傾向、その特色についての解説でした。

これを通じて、まずは敵を知り、自分が何を対策するべきか、考えていきましょう

慶応小論文には、問題文、設問ともにそれぞれの難しさがありますが、何がどう難しいのかを把握してしまえば、あとは対策が容易になるからです。

以上を踏まえて、慶応小論文の難しさを一言でまとめるならば、「正統派」の難しさであり、当大学のハードルの高さを示しているようにも見えます。

対策についても別の場所で解説しますが、いずれにしても、小手先のテクニックで乗り切るのが難しそうな相手だとわかると思います。

著者情報

究進塾 編集局

究進塾 編集局
東京・池袋にある究進塾の編集局です。受験指導のプロが大学受験に役立つ情報をお届けしています。 大学受験対策コースはこちらからご覧いただけます。

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