センター倫理の最も効果的な暗記法

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例年、受験生の中では少数派とはいえ、センターで「倫理」を選択したり、選択せざるを得なかったりする学生がいます。そのうち多くが、日本史や世界史、国語など文系科目を得意とする学生です。

しかし、歴史や文学史などの暗記科目で点数がとれても、なぜか倫理の点数は伸びなやむ…というひとも少なくありません。

それは、倫理、正確には「思想史」という分野においては、その他の歴史的な学問とは別の仕方で、暗記に挑む必要があるからなのです。

本記事では、まだまだ情報の少ない倫理という科目の勉強法について、少しの工夫で点数を伸ばす方法を紹介したいと思います。

◆倫理の四つの分野

倫理という科目を受験するにあたっては、四つの小区分について理解しておかなくてはなりません。どんな参考書にも書いてあることではありますが、倫理は次の四つの小区分からなります。

  • 源流思想:仏教、キリスト教、イスラム教、古代ギリシア哲学、諸子百家
  • 日本思想:日本仏教、神道、江戸期の思想、近代以後の思想
  • 西洋思想:西洋哲学(経験論、合理論、啓蒙主義、観念論、などなど)
  • 一般的な社会問題を含む倫理的問題

最後の一般的な問題は、青年の心理や人権に関わる事柄で、現代社会の公民などの分野と隣接します。この部分に関しては、暗記というよりも常識を身につけ、自身の意見をはっきりさせておく必要がありますが、経験から言って、この小区分はあまり試験のポイントにはなりません。

むしろ上の三つの小区分をどうおさえるかということのほうが、倫理にとっては大きな問題です。

上の三つの小区分は、大きく分けて、二つのメインテーマからなります。ひとつは西洋思想、もう一つは日本思想です。そしてこれらに対して、それぞれの源流思想として、ユダヤ・キリスト教やギリシア哲学、そして仏教・中華思想が位置付けられます。

イスラム教、イスラム思想については、ほとんど常識的な知識が問われるだけなので、ここでは不問とします。

区分 源流
西洋近世・近現代哲学 ギリシア哲学、ユダヤ・キリスト教思想、ストア派(ローマ)哲学
日本近世・近現代思想 仏教、中華思想

問題は、日本思想と西洋思想とをその源流とともに、それぞれどうおさえていくか、ということに終始するでしょう。

受験生にとって重要なことは、近世以後の思想と、その源流としての古代期の思想とを、つなぎ合わせて一連の流れを理解することです。

◆勉強法の基本 時代ごとではなく、トピックごと

多くの受験生が陥りがちな誤りは、世界史を学ぶ時のように、思想史も「時代ごと」の区切りで勉強してしまう、ということです。

実際、教科書にはそのように書いてありますし、先生もそのように教えるかもしれません。
その上受験生には思想史の全容を見渡す視野はありませんから、仕方のないことと言えるでしょう。

しかし、時代ごとに縦割りにした勉強法は、実に効率が悪いとともに、事柄の本質を見落としてしまうことにもつながります。

というのも、そもそも思想の歴史とは、先人たちの学説に対するアンチ・テーゼの積み重ねであって、そのテーマは時代を超えるものなのですから、単に同じ時代に生きていただけの哲学者たちを横に並べてみても、何も重要なことは見えてこないからです。

例えば、西洋現代哲学のひとつとして、構造主義と実存主義の対立が語られることがあります。

人間の本質を社会的な構造にみたレヴィ=ストロースと、人間の根源的な孤独を見つめたキルケゴールとの対立関係が強調されることがあるかもしれません。

しかし、この対立がどのような対立であって、事柄として何が問題なのかということは、単に同時代に議論を交わしていた彼らの関係を見つめることからはわかるはずもないのです。

なぜなら、実存主義はデカルト・カント哲学からのひとつの帰結であるのに対して、構造主義は、あくまで文化人類学的な土壌から発した思想である以上、両者の問題の水準は全くことなるからです。

こうして、時代ごとに区切った思想の理解では、問題の本質を捉えることができないことがわかります。それよりも重要なのは、ひとつのトピックに限定して、思想の流れを遡ってみることです。

例えば、実存主義に限定してそれを考えてみましょう。

人間の根源に絶対的な主観性とその孤独を見出す実存主義は、一般に、キルケゴールに始まり、ハイデガーを経て、サルトルにおいて大成すると考えられています。

この問題意識は、「人間存在の根源に何があるか」という、きわめてわかりやすいものです。

ハイデガーは、人間の根源に「不安」という感情を認め、これを主観の根本的な条件とみなしました。こういう問題設定は、そもそも近代以後の、デカルトにおける「自我」の発見と、これに対する反論という方向を与えられています。

つまり、デカルトが自我の認識の明証的な確実性を説き、これをみずからの知の根本においたことに対して、ハイデガーら実存主義者は、「自らの存在はそれほど確実なものでもないし、知的なものでもない」と反論しているわけです。

それでは、デカルト以前にこうした問いがなかったのかというと、それは源流思想のひとつであるアウグスティヌスのキリスト教思想にまで立ち戻ります。

アウグスティヌスは、自己の存在の確実さを見出し、これを自分の知の源泉においたことで知られています。デカルトはこの意味で、アウグスティヌスの論法を引き継いでいるのです。

実存主義→デカルトの「エゴ・コギト」→アウグスティヌスの『告白』

以上の例をみれば、「実存主義vs構造主義」という、互いに水準のことなる思想同士の捏造された、擬似的な対立よりも、いっそう明白に、実存主義の問題設定の枠組みが見えてくるはずです。このようにして、思想史の勉強はどのジャンルについても、トピックごとに歴史を追ってみることが重要です。

では具体的にどうすればいいかというと、まずは教科書・参考書の類を読み、自分なりに思想の年代記をまとめてみることが大事です。

先の実存主義の例で言えば、「人間存在の根本問題」の思想史を、教科書から抜き出してまとめてみれば良いのです。このように、時代ごとの「横軸」で区切るよりも、トピックごとの「縦軸」で俯瞰することのほうが、よっぽど効率の良い勉強法です。

教科書で足りない場合、岩波書店や平凡社から出版されている『哲学・思想辞典』の類が便利です。トピックごとに項目が作られているため、時代の流れを追うのに、これ以上ない教科書となるでしょう。とは言え高額な本ではあるので、図書館などにいって参照するのがいいと思います。

まとめ: 思想史は、トピックごとの〈縦軸〉で覚える!教科書よりも、辞典を引いてみるのがおすすめ!

◆暗記法の最善策:原語で覚える

思想史は、特に西洋の思想の場合、用語や術語が難解で、暗記に苦労することもあるかもしれません。

日本思想であれば、もとが日本語なのであまり意味不明なものは少ないのですが、西洋思想の場合、西洋語を元に日本語に翻訳されているので、言葉とその言葉が意味する事柄とが、イメージとして乖離してしまうこともしばしばです。

この乖離がもとで、「言葉を覚えたのに事柄がよくわからない」という学生が多く発生することになります。

この場合、最良の解決策は、その言葉の意味をよく調べてみたり、考えてみたりすることではなくて、「原語を見る」ことです。 

たとえば、「ドイツ観念論」という単語は、印象的なものですから、覚えるのにはさほど苦労しないでしょう。

しかしその内実と結びあわせて覚えようというとき、「観念」という言葉の不透明さが邪魔をします。

私たちは普通、「観念」という言葉で何を理解しているかというと、「固定観念」などの言い回しにみられるように、「ものの考え方」を理解していると思います。

しかし、ドイツ観念論という場合、このような意味での観念と同じ事柄ではありません。むしろ、ドイツ観念論における「観念」は、「精神における事物の像」、言い換えるなら「現象」や「表象」と近い意味をもっています。

このことを、日本語の「観念」という単語と結びつけることは、それほど容易ではないでしょう。

反対に、「ドイツ観念論」を、 “German Idealism”とか、 “Deutscher Idealismus” とか覚えてみるとどうでしょう。高校生がドイツ語を理解できないのは仕方ありませんから、せめて英語で考えてみましょう。「観念論」はIdealismです。

アイデア=イデアとは、プラトンが唱えたあの「イデア論」のイデアと同じ言葉ですね。
その意味がプラトンのものと同じかどうかについては、複雑な歴史的背景をみなくては判断できませんが、少なくとも、Idea–thingが対義語であることや、ドイツ観念論がプラトン以来脈々とつがれてきた問題を扱っていることは、一目瞭然であると思います。

要するに、外国の文化を日本語に翻訳して理解しようというのは、やはり色々な困難を伴う挑戦ですから、手っ取り早く事柄を理解しようと思うなら、原語、あるいは英語で、単語を記憶してしまった方が早い、というわけです。

これについても、辞典の類は必ず日本語の横に原語/英語/仏語/独語あたりは併記してますから、これも一緒に覚えてしまえば良いだけです。

つまり、覚えることが増えて一見遠回りにみえる勉強法も、総じてみれば、思想史の流れをおいやすくなるとともに、事柄と言葉との対応関係を明瞭にするという二点において、非常に有益なものと言えるわけです。

まとめ

以上、勉強しにくい「思想史」としての「倫理」の勉強法でした。
まとめると、最重要項目は、〈トピックごとに縦軸で〉歴史の流れを遡り、〈原語を参照しつつ〉言葉を暗記する、ということでした。両方とも、慣れるまでは暗中模索で苦しい作業かもしれませんが、かならず得点を挙げるための、正攻法と言えるでしょう。

著者情報

究進塾 編集局

究進塾 編集局
東京・池袋にある究進塾の編集局です。受験指導のプロが大学受験に役立つ情報をお届けしています。 大学受験対策コースはこちらからご覧いただけます。

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